京都市客引き行為禁止条例の罰則が9月から施行されるのに伴い、市が氏名を名乗らない違反者の写真を撮影する方針を30日の情報公開・個人情報保護審議会に示したところ、異論が相次いだ。市は罰則の氏名公表を行う際の「本人特定に必要」と説明したが、違反者の写真を市が一方的に撮影して保管することに批判が集まり、継続審議となった。
条例は祇園地区などの繁華街で、飲食店やカラオケ店などの客引き行為を禁止し、指導や勧告などに従わない違反者に、氏名公表や5万円以下の過料を科す。
市は、同様の条例を昨年10月に施行した大阪市で、違反者が氏名を名乗らなかったり、偽名を伝えるケースが多発しているとして、名乗らない場合は次回に写真撮影することを警告し、再び違反すれば撮影する方針を示した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150730-00000034-kyt-l26
根拠は必要だろうか。
行政処分の前提となる行政調査の一手法として写真撮影が可能か、という論点だと思われる。
行政調査については非常に争いがあるところで行政法学の分野でいまだ議論が尽くされていない。
ただ、いずれにしても根拠法があれば写真撮影は可能であろう。だから写真撮影を可能とする旨の条例を制定すれば足りる。
「可能であろう」と断言しなかったのは、実は別の問題もここには含まれている。それが比例原則だ。つまり、行政目的との関係でその手段が相当であること(人権制約の程度が過度ではないこと)という要件もある。
こちらのほうについてはどうであろうか。もちろん、違反者に対して氏名を名乗るように指導する必要がある。それに応じればそれで足りる。それで応じなかった場合、その場合、適正な行政処分を下すため、写真撮影以外には方法がないのではないか。繁華街で観光客も含めて多数の人の往来があり、誰が客引きをしたのかを特定する方法は他にはない。もちろん、強制的に指紋を採取するなどという方法はあるが、それは写真撮影より人権制約的であろう。とすれば、氏名を名乗るように指導した結果、応じなかった場合の写真撮影は過度に人権制約的とは言えないだろう。
なお、氏名を名乗るように指導した結果、これに応じたが偽名であった場合どうなるであろうか。この場合、適正な行政処分を下すことはできないことになる。そして、氏名を名乗ったがそれが本名か偽名かは通常、現場では判断できない。とすれば、真に適正な行政処分を下すには、氏名を名乗ったか否かをとわず、すべて写真撮影による証拠保全が必要ということにもなりうる。しかし、氏名を名乗るように指導した結果、偽名を名乗って処分を免れる事案が多数発生しているという社会実体はない(なお大阪ではあるようであるが、京都ではそのような事態は現状において発生していない。他の都道府県ではそのような事態の有無が明らかにされていない。)。とすれば、偽名を名乗って処分を免れるような事案に備えた対応については、現状において、立法事実に含むことはできない。
以上により、氏名を名乗るように指導した結果、応じなかった時において、写真撮影をすることができる旨の条例が成立した場合、そのように写真撮影することは許されるというべきだろう。
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