2015年7月31日金曜日

アリさん引越社を提訴=弁償金天引きで従業員ら―名古屋地裁

 「アリさんマーク」のテレビCMで知られる「引越社」(名古屋市中川区)の従業員らが、客の荷物が破損した際などの弁償金を給料から天引きされるなどしたのは不当だとして、同社やグループ会社に約7000万円の支払いを求める訴えを31日、名古屋地裁に起こした。
 
 訴状によると、同社は引っ越し作業中に発生した荷物の破損や交通事故などの賠償に必要な金額を「弁済金」名目で従業員の給料から天引きしていた。
 原告の元従業員鈴木拓也さん(28)は「衣服が入っていた段ボールが雨でぬれた際、クリーニング代約15万円を現場にいた6人で払わされた」と振り返り、「違法に取られたお金を返してほしい」と訴えた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150731-00000101-jij-soci

アリさんマークの引越社って「引越社」が社名なのか。
まぁ、それはともかく、労働者が業務上、故意または過失により第三者に損害を与えた場合、使用者がその第三者に対しその損害を賠償したときは、使用者は労働者に対して求償権を取得します。
しかし、まず前提として、第三者に対して賠償した金額が相当であることが必要です。使用者は対外的信用を保持すべく、法律上認められていないような迷惑料や見舞金などを支払うことがありますが、これは使用者が負担すべきです。労働者は負担する必要は一切ありません。
さらに、使用者は業務上一定の損害が発生することは当然に予見できますし、労働者を使用することにより利益を得ている以上損失も負担すべきといえます。
そこで、損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度においてのみ請求ができるとして、労働者の責任を制限しています(最高裁)。

さらにさらに、労働基準法24条は賃金の全額払いを定めています。
労働者が使用者に対して求償の責任を負うとしても、それを賃金から天引きすることは許されていません。これは相殺等の法律構成を用いたとしても同じことです。

もっとも、労働者がこれに同意した場合は天引きは許されます。
ただし、使用者が事実上の圧力を行使して労働者の同意を強制することも考えられます。
そこで、ここでいう同意があったか否かは慎重な判断を有するとされています。
書面にサインさせればいい、などという甘い経営者の判断はあっさり否定されるでしょう。

さて、本件を検討します。
「客の荷物が破損した際などの弁償金」ということですが、実際に損害は発生したのでしょうか。また客に弁済したのでしょうか。
さらに、法律上弁済の義務があったのでしょうか。
そして、それを労働者に求償できるのでしょうか。
とどめは、天引きが許される例外である労働者の真の意味における同意があったのでしょうか。

アリさんマークの引越社はブラックほぼ認定、という印象ですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

/*ツイッター用*/