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破産法等の見直しに関する要綱

平成十五年九月十日

法制審議会総会決定


        (前注)  この要綱において「第…条」とあるのは、破産法の規定を示す。

第一部 破産手続

第一  総則

 一  管轄の特例

  1  親法人とその子会社

   (一)  子会社についての申立て

 親法人について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、子会社についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

   (二)  親法人についての申立て

 子会社について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、親法人についての破産手続開始の申立ては、子会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

   (三)  いわゆる孫会社の取扱い

 次の場合には、(1)の他の株式会社又は(2)の他の有限会社を当該親法人の子会社とみなして、(一)又は(二)を適用するものとする(商法第二百十一条ノ二第三項参照)。

    (1)  a親法人及び子会社又はb子会社が、他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有するとき。

    (2)  a親法人及び子会社又はb子会社が、他の有限会社の総社員の議決権の過半数を有するとき。

     (注)  法人が、株式会社の総株主の議決権の過半数又は有限会社の総社員の議決権の過半数を有する場合における当該法人を「親法人」と、当該株式会社又は当該有限会社を「子会社」という。

  2  商法特例法上の大会社とその連結子会社

   (一)  連結子会社についての申立て

 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)第一条の二第一項に規定する大会社(連結親会社)について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、同条第四項に規定する連結子会社についての破産手続開始の申立ては、当該大会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

   (二)  連結親会社についての申立て

 商法特例法第一条の二第四項に規定する連結子会社について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、同項に規定する他の株式会社(連結親会社)についての破産手続開始の申立ては、当該連結子会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

    (注)  (一)及び(二)については、当該大会社(連結親会社)の直前の決算期において商法特例法第十九条の二又は第二十一条の三十二の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成され、かつ、定時総会において当該連結計算書類が報告された場合に限るものとする。

  3  法人とその代表者

   (一)  法人の代表者についての申立て

 法人について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

   (二)  法人についての申立て

 法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合には、当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

  4  連帯債務者等

 次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属している場合には、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。

   (一)  相互に連帯債務者の関係にある個人

   (二)  相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人

   (三)  夫婦

  5  複数の管轄裁判所の調整

 原則的管轄に関する規定(第百五条又は第百七条第一項及び第二項参照)又は1から4までにより二以上の裁判所が管轄権を有するときは、破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった裁判所が管轄するものとする。

 二  移送

 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、破産事件を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができるものとする。

  (一)  債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所

  (二)  債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所

  (三)  債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所

  (四)  一1から4までに規定する地方裁判所

  (五)  一1から4までにより(四)の地方裁判所に破産事件が係属しているときは、原則的管轄裁判所

 三  不服申立て

 破産手続、免責手続及び復権手続(以下「破産法の定める手続」という。)に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができるものとする。その期間は、当該裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とするものとする。

  (注)  即時抗告の可否については、所要の整備をするものとする。

 四  送達及び公告

  1  送達すべき裁判

 破産法の定める手続に関する裁判のうち、送達すべきものは、個別に規定するものとする(第百十一条の規定は削除するものとする。)。

  2  公告等をすべき場合の取扱い

   (一)  破産法の定める手続に関する裁判のうち、現行の破産法において公告及び送達をしなければならないとされているもの(第百十八条参照)については、公告及び通知(民事訴訟規則第四条第一項参照)をしなければならないものとする。

   (二)  破産法の規定によって送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができるものとする。

   (三)  (二)は、特別の定めがある場合には、適用しないものとする。

  3  公告の方法

 破産法の定める手続においてする公告(第百十五条及び第百十六条参照)は、官報に掲載してするものとする。

 五  登記及び登録の嘱託

  1  嘱託の主体

 登記及び登録の嘱託は、裁判所書記官がするものとする(民事再生法第十一条及び会社更生法第二百四十六条参照)。

  2  破産財団に属する権利に関する登記

 破産財団に属する権利で登記又は登録をしたもの(不動産所有権等)に関する破産手続開始の登記、破産手続開始の決定の取消しの登記、破産手続廃止の登記及び破産手続終結の登記の制度(第百二十条及び第百二十一条参照)は、破産者が法人である場合については、廃止するものとする。

   (注)  2に関して、破産財団に属する財産につき根抵当権を有する者については、破産手続開始の決定がされたことを証する書面を添付して、単独で、根抵当権の元本の確定の登記の申請をすることができるものとする旨の見直しを行うものとする。

  3  否認の登記

   (一)  登記の原因である行為が否認されたときは、破産管財人は、否認の登記をしなければならないものとする。登記が否認されたときも、同様とするものとする(第百二十三条第一項参照)。

   (二)  登記官は、破産管財人が(一)の否認の登記がされた不動産等の任意売却等をした場合において、当該任意売却等を原因とする登記がされるときは、a当該否認の登記並びにb否認された行為を原因とする登記又は否認された登記及びこれらの登記の後にされた登記であって破産債権者に対抗することができないものの抹消等をしなければならないものとする。

   (三)  裁判所書記官は、(一)の否認の登記がされている場合において、破産者について、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、職権で、遅滞なく、否認の登記の抹消を嘱託しなければならないものとする(民事再生法第十三条第二項及び会社更生法第二百五十条第二項参照)。

 六  事件に関する文書の閲覧等

  1  文書等の閲覧等の請求

 利害関係人は、原則として、裁判所書記官に対し、破産法の定める手続に関する事件に関する文書等の閲覧及び謄写等の請求をすることができるものとする(民事再生法第十七条第一項から第三項まで及び会社更生法第十四条第一項から第三項まで参照)。

  2  閲覧等の請求の時期的制限

 債務者以外の利害関係人は、強制執行等の中止命令(第三・一参照)等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとし、債務者は、破産手続開始の申立てに関する口頭弁論又は債務者を呼び出す審尋の期日の指定等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとする(民事再生法第十七条第四項及び会社更生法第十四条第四項参照)。

  3  支障部分の閲覧等の制限

 破産管財人の行為に対する裁判所の許可(第十二・一4参照)を得るために裁判所に提出された文書等の一定の文書等について、利害関係人による閲覧及び謄写等が行われることにより、破産財団の管理又は換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該部分について閲覧等を請求することができる者を、保全管理人又は破産管財人に限ることができるものとする(民事再生法第十八条及び会社更生法第十五条参照)。

 七  最高裁判所規則への委任

 破産法に定めるもののほか、破産法の定める手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定めるものとする。

第二  破産手続開始の申立て

 一  破産手続開始の申立書の審査

  1  補正を命ずる処分

   (一)  破産手続開始の申立ては、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でしなければならないものとする。

   (二)  (一)の書面が(一)の事項を記載していない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならないものとする。民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い破産手続開始の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とするものとする。

   (三)  (二)の処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずるものとする。

  2  処分に対する異議申立て

   (一)  1(二)の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならないものとする。

   (二)  (一)の異議の申立ては、執行停止の効力を有するものとする。

   (三)  裁判所は、(一)の異議の申立てがあった場合において、1(二)に規定する場合であると認めるときは、自らその補正を命じなければならないものとする。

  3  破産手続開始の申立書の却下

   (一)  1(二)又は2(三)の場合において、破産手続開始の申立てをした者が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、1(一)の書面を却下しなければならないものとする。

   (二)  (一)の命令に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

 二  破産手続の費用

  1  費用の予納

   (一)  破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならないものとする。

   (二)  費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

  2  費用の仮支弁

   (一)  1(一)にかかわらず、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、裁判所は、申立人の予納義務を免除することができるものとする。

   (二)  裁判所は、(一)により申立人の予納義務を免除した場合又は職権で破産手続開始の決定をした場合には、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができるものとする。

 三  破産手続開始の条件

 裁判所は、破産の原因となる事実があると認めるときは、次の(一)又は(二)のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をするものとする。

  (一)  破産手続の費用の予納がないとき。

  (二)  不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

第三  保全処分

 一  強制執行等の中止命令

  1  強制執行等の中止

 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権若しくは民事留置権による競売(一及び二において「強制執行等」という。)の手続で、債務者の財産に対して既にされているものの中止を命ずることができるものとする。ただし、その手続の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限るものとする。

  2  その他の手続の中止

 1のほか、裁判所は、a債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続、b債務者の財産関係の訴訟手続、c債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続、d債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律又は油濁損害賠償保障法に規定する責任制限手続をいう。)(第百五十五条ノ二参照)についても、中止を命ずることができるものとする。

  3  強制執行等の手続の取消し

 裁判所は、五1(一)による保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理又は処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、1により中止した1の手続の取消しを命ずることができるものとする。

   (注)  1又は2による中止の命令の変更及び取消し、1又は2による中止の命令等に対する即時抗告、送達等について、所要の規定を整備するものとする。

 二  包括的禁止命令

  1  発令の要件

 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債権者の間の平等を害するおそれがある等、一1による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、強制執行等及び国税徴収法又は国税徴収の例による滞納処分(交付要求を除く。以下「国税滞納処分」という。)の禁止を命ずることができるものとする。ただし、事前に又は同時に、破産財団に属すべき財産で主要なものに関し処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分(第百五十五条参照)をした場合又は五1(一)による保全管理命令をした場合に限るものとする。

  2  一定の範囲に属する債権等の除外

 1による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する強制執行等又は国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができるものとする。

  3  係属中の強制執行等に対する効力

 包括的禁止命令が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続は、中止するものとする。

  4  強制執行等の手続の取消し

 裁判所は、五1(一)による保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理又は処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、3により中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができるものとする。

  5  租税債権の取扱い

 国税徴収法又は国税徴収の例により徴収することのできる請求権(以下「租税債権」という。)につき、財団債権となる基準である「一年」(第三部・第二・一1(一)参照)の期間については、1により国税滞納処分をすることができない期間は、除外して計算するものとする。

   (注)  包括的禁止命令の変更及び取消し、包括的禁止命令等に対する即時抗告、時効の停止、公告及び送達、解除等について、所要の規定を整備するものとする。

 三  弁済禁止の保全処分に違反してされた弁済等の効力

 裁判所が、債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができないものとする。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限るものとする。

 四  否認権のための保全処分

  1  保全処分の発令

   (一)  裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定があるまでの間、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができるものとする。

   (二)  (一)の保全処分は、担保を立てさせて、又は立てさせないで命ずることができるものとする。

   (三)  裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、(一)の保全処分を変更し、又は取り消すことができるものとする。

    (注)  1の保全命令に対する即時抗告、送達等について、所要の規定を整備するものとする。

  2  破産管財人による手続の続行と担保の取扱い

   (一)  1(一)の保全処分が命じられた場合において、破産手続開始の決定があったときは、当該決定後一か月以内に限り、破産管財人は、当該保全処分に係る手続を続行することができるものとする。

   (二)  破産管財人が(一)による保全処分に係る手続の続行をしないときは、当該保全処分は、効力を失うものとする。

   (三)  破産管財人は、1(一)の保全処分に基づき担保が立てられている場合(当該担保が破産財団に属する財産をもって立てられている場合を除く。)において、(一)により当該保全処分に係る手続を続行しようとするときは、当該担保を破産財団に属する財産をもって立てる担保に変換しなければならないものとする。

  3  手続が続行された場合の取扱い

 破産管財人が2(一)による保全処分に係る手続の続行をしたときは、当該保全処分について民事保全法の規定を準用するものとする。

 五  保全管理命令

  1  発令の要件

   (一)  裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債務者(法人である場合に限る。(一)において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるときその他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分(以下「保全管理命令」という。)をすることができるものとする。

   (二)  裁判所は、保全管理命令をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならないものとする。

    (注)  保全管理命令の変更及び取消し、保全管理命令等に対する即時抗告、公告及び送達、保全管理人代理等について、所要の規定を整備するものとする。

  2  保全管理人の権限

   (一)  保全管理命令が発せられたときは、債務者の財産の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属するものとする。ただし、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。

   (二)  (一)ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができないものとする。

   (三)  破産管財人についての裁判所の許可を要する事項(第十二・一4参照)及び許可を得ないでした行為の効力(第二百一条参照)等の規定は、保全管理人について準用するものとする。

  3  保全管理人の権限に基づく行為によって生じた請求権

 保全管理人が債務者の財産に関し権限に基づいてした処分その他の行為によって生じた請求権は、財団債権とするものとする。

  4  任務終了の場合の報告義務等

   (一)  保全管理人の任務が終了した場合には、当該保全管理人は、遅滞なく、裁判所に計算の報告をしなければならないものとする。

   (二)  (一)にかかわらず、(一)の保全管理人がいない場合には、(一)の計算の報告は、後任の保全管理人又は破産管財人がしなければならないものとする。

   (三)  保全管理人の任務が終了した場合において、急迫の事情があるときは、保全管理人又はその承継人は、後任の保全管理人、破産管財人又は債務者が財産を管理することができるに至るまで必要な処分をしなければならないものとする。

    (注)  3の請求権のうち、第四十七条第三号に掲げる請求権に相当するものについては、他の財団債権に優先するものとする(第三部・第二・三3(二)参照)。

 六  保全処分の申立ての濫用の防止

 破産手続開始の申立てをした者は、破産手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができるものとする。この場合において、強制執行等の中止命令、包括的禁止命令、その他の必要な保全処分(第百五十五条参照)又は保全管理命令がされた後は、裁判所の許可を得なければならないものとする。

第四  破産手続開始の効果

 一  検察官への通知

 破産手続開始の検察官への通知の制度(第百四十四条参照)は、廃止するものとする。

 二  破産者の説明義務等

  1  破産者の説明義務

   (一)  次に掲げる者は、破産管財人、債権者集会又は債権者委員会の請求により、破産に関して必要な説明をしなければならないものとする。ただし、(4)に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限るものとする。

    (1)  破産者及びその代理人

    (2)  破産者の理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人

    (3)  (2)に掲げる者に準ずる者

    (4)  破産者の従業者((1)の代理人に該当する者を除く。)

   (二)  (一)は、前に(一)各号に規定する資格を有していた者について準用するものとする。

  2  破産者の重要財産開示義務

 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとする。

   (注)  破産者の1(一)又は2に規定する義務の違反をもって、免責不許可事由とするものとする(第三百六十六条ノ九第五号参照)。

  3  物件検査権等

   (一)  破産管財人は、破産者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。

   (二)  破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社(いわゆる孫会社を含む。)又は連結子会社に対してその業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。

   (三)  (二)の子会社又は連結子会社は、正当な理由がない限り、(二)による報告又は検査を拒むことができないものとする。

 三  郵便物の管理

  1  裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第三項に規定する信書便物(以下「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができるものとする。

  2  裁判所は、破産者の申立てにより又は職権で、破産管財人の意見を聴いて、1による嘱託を取り消し、又は変更することができるものとする。

  3  破産手続が終了したときは、裁判所は、1による嘱託を取り消さなければならないものとする。

  4  1又は2による決定及び2の申立てを却下する裁判に対しては、破産者及び破産管財人は、即時抗告をすることができるものとする。

  5  1による決定に対する4の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。

  6  破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができるものとする。

  7  破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った6の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができるものとする。

 四  係属中の債権者代位訴訟

 破産債権者が提起した債権者代位訴訟が破産手続開始の決定時に係属するときは、その訴訟手続は、中断するものとする。

  (注)  その他詐害行為取消訴訟の中断及び受継と同様の規定(会社更生法第九十八条参照)を設けるものとする。

第五  破産管財人

 一  破産管財人の資格

 法人は、破産管財人となることができるものとする。

 二  複数管財人の職務執行

  1  破産管財人が数人あるときは、共同してその職務を行うものとする。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができるものとする。

  2  破産管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする。

 三  破産管財人代理の選任

  1  選任の要件

   (一)  破産管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の破産管財人代理を選任することができるものとする。

   (二)  (一)の破産管財人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならないものとする。

  2  破産管財人代理の報酬等

 破産管財人代理は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができるものとする。

 四  破産管財人の裁判所への報告

  1  破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく、次に掲げる事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならないものとする。

   (一)  破産手続開始の決定に至った事情

   (二)  破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況

   (三)  法人である破産者の理事等の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判又は保全処分(第十二・一5参照)を必要とする事情の有無

   (四)  その他破産手続に関し必要な事項

  2  破産管財人は、1によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団の管理及び換価の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならないものとする。

 五  破産管財人の職務執行に対する妨害行為への対策

 破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができるものとする。

  (注)  五は、保全管理人の職務執行について準用するものとする。

第六  監査委員

 監査委員の制度(第百七十条から第百七十五条まで参照)は、廃止するものとする。

第七  債権者集会

 一  債権者集会の招集

  1  財産状況報告集会

   (一)  裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産財団の状況を報告するための債権者集会の期日を定めなければならないものとする。

   (二)  (一)にかかわらず、裁判所は、債権者の数その他の事情を考慮して債権者集会を招集することを相当でないと認めるときは、(一)の期日を定めないことができるものとする。

  2  財産状況報告集会以外の債権者集会

   (一)  一般的な債権者集会

    (1)  裁判所は、次の各号に掲げる者のいずれかの申立てがあった場合には、債権者集会を招集しなければならないものとする。ただし、債権者の数その他の事情を考慮して債権者集会を招集することを相当でないと認めるときは、この限りでないものとする。

     ア  破産管財人

     イ  債権者委員会

     ウ  知れている破産債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる破産債権を有する破産債権者

    (2)  裁判所は、(1)の申立てがない場合であっても、相当と認めるときは、債権者集会を招集することができるものとする。

    (3)  (1)ただし書の場合において、債権者集会の決議を要する事項があるときは、裁判所は、議決権行使の方法について四(二)の方法を定めて、当該事項を決議に付さなければならないものとする。

   (二)  異時廃止の決定をする際の意見聴取のための債権者集会

    (1)  裁判所は、異時廃止の決定をする場合には、債権者集会において破産債権者の意見を聴かなければならないものとする。

    (2)  (1)にかかわらず、裁判所は、相当と認めるときは、(1)の債権者集会における意見の聴取に代えて、書面によって破産債権者の意見を聴くことができるものとする。

    (3)  (一)(1)イ又はウに掲げる者は、裁判所による異時廃止に関する破産債権者の意見聴取を目的として(一)(1)の申立てをすることはできないものとする。

   (三)  破産管財人の計算の報告

    (1)  計算の報告書の提出

     ア  破産管財人の任務が終了した場合には、当該破産管財人は、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出しなければならないものとする。

     イ  アにかかわらず、アの破産管財人がいない場合には、アの計算の報告書は、後任の破産管財人が提出しなければならないものとする。

    (2)  債権者集会における計算の報告

     ア  (1)ア又はイの場合には、(1)アの破産管財人又は(1)イの後任の破産管財人は、破産管財人の任務終了による計算の報告を目的として(一)(1)の申立てをしなければならないものとする。

     イ  破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(アの後任の破産管財人を除く。)は、アの申立てによる債権者集会において、(1)ア又はイの計算について異議を述べることができるものとする。

     ウ  イの異議がなかった場合には、(1)ア又はイの計算は、承認されたものとみなすものとする。

     エ  (1)ア又はイによる計算の報告書の提出日とアの申立てによる債権者集会の期日との間には、三日以上の期間がなければならないものとする。

    (3)  書面による計算の報告

     ア  (2)アの場合には、(2)アの破産管財人又は後任の破産管財人は、(2)アの申立てに代えて、裁判所に書面による計算の報告をする旨を申し立てることができるものとする。

     イ  裁判所は、アによる申立てがあったときは、計算の報告書の提出があった旨及びその計算に異議があれば一定期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならないものとする。この場合においては、その期間は、一か月を下ることができないものとする。

     ウ  破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(アの後任の破産管財人を除く。)は、イの期間内に(1)ア又はイの計算について異議を述べることができるものとする。

     エ  ウの異議がなかった場合には、(1)ア又はイの計算は、承認されたものとみなすものとする。

   (四)  不換価財産の処分の決議

 不換価財産の処分の決議の制度(第二百八十一条参照)は、廃止するものとする。

 二  必要的決議事項の取扱い

  1  事業の継続

 営業の廃止についての決議の制度(第百九十四条参照)は、廃止するものとし、破産管財人は、破産手続開始の決定がされた後であっても、裁判所の許可を得て、事業を継続することができるものとする。

  2  高価品の保管方法

 高価品の保管方法についての決議の制度(第百九十四条参照)は、廃止するものとする。

    (注)  破産管財人は、高価品の保管方法を定め、裁判所に届け出なければならないものとする旨を最高裁判所規則で定めるものとする。

 三  破産管財人の解任

 裁判所は、破産管財人が破産財団の管理を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができるものとする。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならないものとする。

 四  議決権の行使方法

 裁判所は、債権者集会の決議を要する事項を決議に付するときは、議決権行使の方法について、次に掲げる方法のいずれかを定めるものとするものとする。

  (一)  債権者集会の期日において議決権を行使する方法

  (二)  書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法

  (三)  (一)又は(二)に掲げる方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法

 五  決議の成立要件

 債権者集会の決議案を可決するには、議決権を行使することができる破産債権者で出席した者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の賛成がなければならないものとする。

第八  債権者委員会

 裁判所は、破産債権者をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、当該委員会が破産手続に関与することを承認することができるものとし、承認の要件、承認を受けた委員会の権限、費用の償還等については、更生手続における更生債権者委員会と同様のもの(会社更生法第百十七条から第百二十条まで参照)とする。

第九  代理委員

 債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができるものとし、代理委員は、これを選任した債権者のために、破産手続に属する一切の行為をすることができるものとする。

  (注)  代理委員が数人いる場合の権限の行使、裁判所の許可の取消し等について、所要の規定を整備するものとする。

第十  破産債権の届出、調査及び確定

 一  破産債権の届出

  1  債権届出期間又は債権調査期間等

   (一)  裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産財団の状況を報告するための債権者集会の期日のほか、次に掲げる事項を定めなければならないものとする。

    (1)  破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)

    (2)  破産債権の調査をするための期間(以下「一般調査期間」という。)又は期日(以下「一般調査期日」という。)

   (二)  (一)(1)及び(2)にかかわらず、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を償うのに足りなくなるおそれがあると認めるときは、債権届出期間並びに一般調査期間及び一般調査期日を定めないことができるものとする。

   (三)  (二)の場合において、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を償うのに足りなくなるおそれがなくなったと認めるときは、債権届出期間及び一般調査期間又は一般調査期日を定めなければならないものとする。

  2  一般調査期間経過後又は一般調査期日終了後の届出等

 破産債権者は、一般調査期間が経過した後又は一般調査期日が終了した後は、裁判所に破産債権の届出をすることができないものとする。ただし、破産債権者がその責めに帰することができない事由によって一般調査期間の満了又は一般調査期日の終了までに届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一か月以内に限り、届出をすることができるものとする。

   (注)  期間の伸長、一般調査期間の経過後又は一般調査期日の終了後に生じた破産債権の届出、届出事項の変更等について、所要の規定を整備するものとする。

  3  届出名義の変更

 届出をした破産債権を取得した者は、一般調査期間が経過した後又は一般調査期日が終了した後でも、届出名義の変更を受けることができるものとする。

  4  租税債権の届出

 破産債権となる租税債権(第三部・第二・一参照)の届出については、破産手続開始の決定前の罰金等(第二百五十四条参照)と同様の取扱いをするものとする。

 二  破産債権の調査

  1  債権調査の方法

   (一)  裁判所による破産債権の調査は、破産管財人が作成した認否書並びに破産者及び破産債権者の書面による異議に基づいてするものとする。

   (二)  裁判所は、(一)にかかわらず、必要があると認めるときは、破産債権の調査を、期日における破産管財人の認否並びに破産者及び破産債権者の異議に基づいてすることができるものとする。

    (注)  債権届出期間の経過後に届出又は他の破産債権者の利益を害すべき届出事項の変更があった破産債権の調査については、必要があると認めるときは、一1(一)(2)により一般調査期間を定めた場合であっても、(二)に規定する期日における債権調査の方式を、一1(一)(2)により一般調査期日を定めた場合であっても、(一)に規定する書面による債権調査の方式を、それぞれとることができるものとする。

  2  特別調査期間等に関する費用の予納

   (一)  裁判所が、債権届出期間の経過後に届出又は他の破産債権者の利益を害すべき届出事項の変更があった破産債権の調査をするための特別調査期間又は特別調査期日(以下「特別調査期間等」という。)を定める場合には、特別調査期間等に関する費用は、当該破産債権を有する者の負担とするものとする。

   (二)  (一)の場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、(一)の費用の予納を命ずる処分をしなければならないものとする。

   (三)  (二)の処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずるものとする。

   (四)  (二)の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならないものとする。

   (五)  (四)の異議の申立ては、執行停止の効力を有するものとする。

   (六)  (二)の場合において、(一)の破産債権を有する者が(二)による予納をしないときは、裁判所は、決定で、(一)の届出又は(一)の届出事項の変更に係る届出を却下しなければならないものとする。

   (七)  (六)の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

  3  特別調査期日の公告

 特別調査期日を定める決定の公告の制度(第二百三十七条参照)は、廃止するものとする。

 三  破産債権者表等

  1  破産債権者表の記載

   (一)  裁判所書記官は、破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載しなければならないものとする。

   (二)  裁判所書記官は、破産管財人又は破産債権者の申立てにより、破産債権の確定に関する訴訟の結果(査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えが提訴期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該裁判の内容。四1参照)を破産債権者表に記載しなければならないものとする。

  2  債権証書への記載

 債権証書に当該債権が確定した旨を記載する制度(第二百四十一条第二項参照)は、廃止するものとする。

  3  破産債権者表の更正

 破産債権者表の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができるものとする。

 四  破産債権の確定

  1  決定による債権確定手続

 破産債権の調査において、破産管財人又は届出をした破産債権者の異議等があった破産債権の内容については、査定の手続及び査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えの手続により確定を行うものとする。

  2  債権確定手続の申立期間等

   (一)  1の査定の申立ては、異議等のある破産債権に係る調査期間の末日又は調査期日から一か月の不変期間内にしなければならないものとする。当該査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えは、その裁判の送達を受けた日から一か月の不変期間内にしなければならないものとする。

   (二)  異議等のある破産債権の確定のための訴訟の受継の申立ては、当該破産債権に係る調査期間の末日又は調査期日から一か月の不変期間内にしなければならないものとする。

   (三)  執行力ある債務名義又は終局判決のある破産債権について、破産者がすることのできる訴訟手続によって異議を主張する場合には、当該異議の主張は、当該破産債権に係る調査期間の末日又は調査期日から一か月の不変期間内にしなければならないものとする。

  3  破産者を相手方とする債権確定訴訟

 破産者を相手方とする債権確定訴訟の制度(第二百四十条第二項、第二百四十四条第二項後段、第二百四十六条第二項及び第二百四十八条第二項参照)は、廃止するものとする。

第十 一 労働組合等の手続関与等

 一  破産手続開始決定の通知

 裁判所は、破産手続開始の決定をした場合には、公告すべき事項を、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは破産者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者(以下「労働組合等」という。)に通知しなければならないものとする。

 二  債権者集会期日の通知

 裁判所は、債権者集会の期日を、労働組合等に通知しなければならないものとする。

 三  営業譲渡についての意見聴取

 裁判所は、営業譲渡の許可(第十二・一4(一)参照)をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならないものとする。

 四  労働債権者に対する破産管財人の情報提供努力義務

 破産管財人は、給料債権又は退職手当の請求権を有する者に対しては、破産手続への参加に必要な情報を提供するよう努めなければならないものとする。

第十 二 破産財団

 一  破産財団の管理

  1  帳簿の閉鎖

 裁判所書記官は、破産管財人の申立てにより、必要があると認めるときは、破産者の財産に関する帳簿を閉鎖することができるものとする。

  2  財産の価額の評定

   (一)  破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産財団に属する一切の財産につき当該決定の時における価額を評定しなければならないものとする。この場合において、破産管財人は、破産者を立ち会わせることができるものとする。

   (二)  破産管財人は、(一)による評定を完了したときは、直ちに破産手続開始の決定の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならないものとする。

   (三)  (二)にかかわらず、破産財団に属する財産の総額が最高裁判所規則で定める金額に満たない場合には、破産管財人は、裁判所の許可を得て、(二)の貸借対照表の作成及び提出をしないことができるものとする。

    (注一 ) 裁判所書記官、執行官又は公証人の立会いの制度(第百八十八条前段参照)は、廃止するものとする。

    (注二 ) 最高裁判所規則において、(三)の金額を千万円と定めるものとする。

  3  財団に属する財産の引渡し

   (一)  裁判所は、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができるものとする。

   (二)  裁判所は、(一)の決定をする場合には、破産者を審尋しなければならないものとする。

   (三)  (一)の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

   (四)  (一)の決定は、確定しなければその効力を生じないものとする。

  4  裁判所の許可を要する事項

   (一)  破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。

(1)から(14)まで(第百九十七条第一号から第十四号までと同じ。)

(15) その他裁判所の指定する行為

   (二)  (一)にかかわらず、(一)(7)から(14)までの行為(第百九十七条第七号から第十四号までの行為)については、次に掲げる場合には、(一)の許可を要しないものとする。

    (1)  最高裁判所規則で定める金額に満たない価額を有するものに関するとき。

    (2)  (1)の金額以上の価額を有するものに関する場合であって、裁判所が、(一)の許可を要しないものとしたとき。

     (注一 ) 最高裁判所規則において、(二)(1)の金額を百万円と定めるものとする。

     (注二 ) 監査委員の制度の廃止(第六参照)に伴い、監査委員の同意に代わる許可の制度(第百九十八条参照)及び破産管財人の行為の中止命令の制度(第二百条参照)は、廃止するものとする。

  5  損害賠償請求権の査定

   (一)  損害賠償請求権の査定の裁判

 裁判所は、法人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができるものとする。

   (二)  民事再生法及び会社更生法と同様の損害賠償請求権の査定の裁判に対する異議の訴えの制度を設けるものとする。

    (注一 ) (二)の異議の訴えにおいて査定の裁判を認可し、又は変更した判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで、仮執行をすることができることを宣言することができるものとする。

    (注二 ) 民事再生法及び会社更生法と同様の理事等の財産に対する保全処分の制度を設けるものとする。

 二  破産財団の換価

  1  換価の時期

 破産管財人は、一般調査期間の満了前又は一般調査期日の終了前においても、破産財団に属する財産を換価することができるものとする(第百九十六条の規定は削除するものとする。)。

  2  別除権の目的財産の任意売却

 破産管財人が別除権の目的である財産を任意売却した場合において、当該別除権に係る担保権が存続するときは、当該担保権を有する者は、その権利の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、破産債権者として、その権利を行うことができるものとする。

   (注)  破産管財人は、別除権の目的である財産を任意売却する場合において当該別除権に係る担保権が存続するとき、又は当該財産を破産財団から放棄するときは、当該担保権を有する者に対して、任意売却をする旨及びその相手方等又は破産財団から放棄する旨を通知しなければならない旨を最高裁判所規則で定めるものとする。

  3  破産管財人による任意売却と担保権の消滅

   (一)  破産管財人による担保権消滅の許可の申立て

    (1)  破産手続開始当時破産財団に属する財産につき別除権に係る担保権(3において「担保権」という。)がある場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、及び次のア又はイに掲げる区分に応じてそれぞれア又はイに定める額に相当する金銭が裁判所に納付されることにより当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。ただし、当該担保権を有する者の利益を不当に害することとなると認められるときは、この限りでないものとする。

     ア  破産管財人において、売得金(注一)の一部を破産財団へ組み入れようとする場合 売得金から組み入れようとする額(以下「組入金」という。)を控除した額

     イ  アに掲げる場合以外の場合 売得金の額

    (2)  破産管財人は、(1)の許可の申立てをしようとする場合において、(1)アに掲げるときは、組入金の額について、あらかじめ当該担保権を有する者と協議しなければならないものとする。

    (3)  (1)の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面(以下「申立書」という。)でしなければならないものとする。

     ア  当該担保権の目的である財産の表示

     イ  売得金の額(アの財産が複数あるときは、売得金の額及びそれぞれの財産の売得金に相当する額)

     ウ  アの財産の売却の相手方の氏名又は名称

     エ  消滅すべき担保権の表示

     オ  エの担保権の被担保債権の額

     カ  (1)アに掲げるときは、組入金の額(アの財産が複数あるときは、それぞれの財産に係る組入金に相当する額)

     キ  (2)による協議の内容及びその経過

    (4)  申立書には、(3)アの財産の売却に係る売買契約の内容を記載した書面(注三)を添付しなければならないものとする。

    (5)  (1)の許可の申立てがあった場合には、申立書及び(4)の書面を、当該申立書に記載された(3)エの担保権を有する者(3において「担保権者」という。)に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

   (二)  担保権の実行の申立て

    (1)  担保権者は、(一)(1)の許可の申立てに異議があるときは、すべての担保権者が申立書及び(一)(4)の書面の送達を受けた日から一か月以内に、裁判所に担保権の実行の申立てを証する書面を提出することができるものとする。

    (2)  破産管財人と担保権者との間で、売得金及び組入金の額((一)(1)イに掲げる場合にあっては、売得金の額)について合意がある場合には、当該担保権者は、担保権の実行を申し立てることができないものとする。

    (3)  裁判所は、担保権者につきやむを得ない事由がある場合に限り、当該担保権者の申立てにより、(1)の期間を伸長することができるものとする。

    (4)  (1)の書面が提出された後に、(1)の担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、当該書面は提出されなかったものとみなすものとする。無剰余執行禁止を定めた規定により当該申立てに係る担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

    (5)  (一)(1)の許可の申立てについての不許可の決定が確定した後に、(1)の担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合において、破産管財人が(一)(1)の許可の申立てをしたときは、(1)にかかわらず、当該担保権の実行の申立てをした担保権者は、(1)の書面を提出することができないものとする。

   (三)  担保権者の買受けの申出

    (1)  担保権者は、(一)(1)の許可の申立てに異議があるときは、(二)(1)の期間((二)(3)により伸長されたときはその伸長された期間。以下同じ。)内に、破産管財人に対し、当該担保権者その他の者(以下「買受希望者」という。)が(一)(3)アの財産を買い受ける旨の申出(以下「買受けの申出」という。)をすることができるものとする。

    (2)  買受けの申出は、買受けの申出の額(注一)を記載した書面でしなければならないものとする。

    (3)  (二)(2)は、買受けの申出について準用するものとする。

    (4)  買受けの申出の額は、申立書に記載された(一)(3)イの売得金の額にその二十分の一の額に相当する額を加えた額以上でなければならないものとする。

    (5)  (1)の場合において、(一)(3)アの財産が複数あるときは、それぞれの財産の買受けの申出の額に相当する額を(2)の書面に記載しなければならないものとする。この場合において、その額は(一)(3)イのそれぞれの財産の売得金に相当する額を下回ることはできないものとする。

    (6)  買受けの申出があったときは、買受希望者は、最高裁判所規則で定める額及び方法による買受けの申出に係る保証金(注四)を破産管財人に交付しなければならないものとする。

    (7)  破産管財人は、買受けの申出があったときは、(1)の期間が経過した後、裁判所に対し、(一)(3)アの財産を買受希望者(買受けの申出が複数あった場合にあっては、最高の買受けの申出の額に係る買受希望者)に売却する旨の届出をしなければならないものとする。この場合においては、(1)の期間内にされた買受けの申出に係る(2)の書面を提出しなければならないものとする。

   (四)  許可の決定

    (1)  裁判所は、担保権者が(二)(1)の期間内に(二)(1)の書面を提出したときを除き、(一)(1)の許可の決定をすることができるものとする。

    (2)  (三)(7)の場合において、(1)の許可の決定があったときは、破産管財人と当該決定に係る(三)(7)に規定する買受希望者(以下「買受人」という。)との間で、(一)(4)の書面の記載内容と同一の内容(売却の相手方を除く。)の売買契約が締結されたものとみなすものとする。この場合においては、買受けの申出の額を売買契約の売得金の額とみなすものとする。

    (3)  担保権者は、(二)(1)の期間が経過した後は、(五)(6)により(1)の許可の決定が取り消され、又は不許可の決定が確定するまでの間、担保権の実行の申立てをすることができないものとする。

   (五)  価額に相当する金銭の納付

    (1)  (四)(1)の許可の決定が確定した場合には、当該決定に係る売却の相手方は、次のア又はイに掲げる区分に応じてそれぞれア又はイに定める額に相当する金銭を裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならないものとする。

     ア  当該決定に係る売却の相手方が(一)(3)ウの売却の相手方である場合 (一)(1)ア又はイに掲げる区分に応じてそれぞれ(一)(1)ア又はイに定める額

     イ  当該決定に係る売却の相手方が買受人である場合 売得金の額((三)(6)の保証金に相当する額を除く。)

    (2)  (1)イによる金銭の納付があったときは、(三)(6)の保証金は、売得金に充てるものとする。

    (3)  (2)の場合には、破産管財人は、(三)(6)の保証金に相当する額の金銭を直ちに裁判所に納付しなければならないものとする。

    (4)  担保権者の有する担保権は、(1)及び(3)による金銭の納付があった時に消滅するものとする。

    (5)  (1)及び(3)による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならないものとする。

    (6)  (1)による金銭の納付がなかったときは、裁判所は、(四)(1)の許可の決定を取り消さなければならないものとする。

    (7)  (6)の場合には、買受人は、当該保証金の返還を求めることができないものとする。

   (六)  配当等の実施等

 裁判所は、(五)(1)及び(3)の規定による金銭の納付があった場合には、担保権者に対し、配当表に基づいて配当を実施し、又は弁済金を交付しなければならないものとする。

    (注一 ) 「売得金」((三)(1)の買受けの申出にあっては「買受けの申出の額」)とは、(一)(3)アの財産の売却によって(一)(3)ウの相手方((三)(1)の買受けの申出にあっては(三)(1)の買受希望者)から取得することができる金銭の額をいうものとする。ただし、当該相手方の負担に帰すべき売買契約の締結及び履行のために要する費用であって、破産財団から現に支出し、又は将来支出すべき実費の額を除くものとする。

    (注二 ) 売買契約に伴って生ずる公租(消費税等)についても、売得金及び買受けの申出の額に含まれないものとする。

    (注三 ) (一)(4)の書面に記載する売買契約の内容には、相手方の負担に帰すべき売買契約の締結及び履行のために要する費用であって、破産財団から現に支出し、又は将来支出すべき実費の額を含むものとする。

    (注四 ) 最高裁判所規則において、保証金の額を買受けの申出の額の十分の二と定めるものとする。

    (注五 ) 買受けの申出の撤回については、次のとおりとする。a(三)(1)の期間中は、買受けの申出をした者又は当該買受けの申出に係る買受希望者は、買受けの申出を撤回することができる、b(三)(1)の期間経過後から(一)(1)の許可の申立てについての裁判があるまでの間は、買受けの申出は、撤回することができない、c(一)(1)の許可の申立てについての裁判があったときは、当該裁判が確定する前であっても、買受人以外の買受希望者は、当該買受希望者に係る買受けの申出を撤回することができるものとする。

    (注六 ) 破産管財人は、(一)(1)の許可の申立てを取り下げるには、買受希望者((四)(1)の許可の決定が確定した後にあっては、買受人)の同意を得なければならないものとする。

    (注七 ) 許可の申立てについての裁判に対する即時抗告、送達、配当手続等について、所要の規定を整備するものとする。

  4  民事執行手続による換価

 無剰余執行禁止を定めた民事執行法第六十三条及び第百二十九条の規定(これらの規定を強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)は、別除権の目的である財産の換価には、適用しないものとする。

  5  商事留置権の消滅請求

 破産手続開始当時破産財団に属する財産につき商事留置権があり、かつ、その商事留置権によって担保された債権額が商事留置権の目的である財産の価額を超える場合において、当該財産が継続された事業に必要なものであるときその他当該財産の回復が破産財団の価値の増加に資するときは、破産管財人は、裁判所の許可を得て、当該留置権者に対し、その財産の価額に相当する金銭を支払って、商事留置権の消滅を請求することができるものとする。

   (注)  その他会社更生法第二十九条と同様の規定を設けるものとする。

第十 三 配当手続

 一  配当の公告等

  1  破産管財人は、配当表を作成してこれを裁判所に提出した後、配当に加えるべき債権の総額及び配当することができる金額を公告し、又は届出をした破産債権者に通知しなければならないものとする。

  2  1による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする。

  3  2により、1による通知が届出をした各破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、その旨を裁判所に届け出るものとする。

  4  中間配当又は最後配当に関する除斥期間は、1による公告が効力を生じた日又は3による届出があった日から起算するものとする。

 二  中間配当の配当率

 中間配当の配当率についての裁判所の許可等の制度(第二百六十五条第二項参照)は、廃止するものとする。

 三  債権証書への配当金額の記入

 債権の証書に配当した金額を記入する制度(第二百六十九条第二項参照)は、廃止するものとする。

 四  最後配当

  1  最後配当の時期の定め

 裁判所は、破産管財人の意見を聴いて、最後配当を実施すべき時期を定めることができるものとする。

  2  裁判所書記官による許可

 破産管財人は、最後配当をするには、裁判所書記官の許可を得なければならないものとする。

  3  除斥期間

 最後配当に関する除斥期間は、一1による公告が効力を生じた日又は一3による届出があった日から起算して二週間とするものとする。

 五  追加配当

 追加配当における配当することができる金額の公告の制度(第二百八十三条第二項参照)は、廃止するものとする。

 六  別除権者の配当参加

  1  被担保債権が担保されなくなったことによる配当参加

 別除権者は、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権額についてのみ、破産債権者として、その権利を行うことができるものとする。ただし、別除権に係る担保権によって担保される債権の全部又は一部が破産手続開始後に担保されないこととなった場合には、その債権の全部又は一部について、破産債権者として、その権利を行うことを妨げないものとする。

  2  根抵当権に関する特則

   (一)  破産管財人は、別除権に係る根抵当権の被担保債権である破産債権については、当該破産債権を有する者が破産管財人に対し当該根抵当権の行使によって弁済を受けることができない債権額を証明しないときでも、当該破産債権を最後配当における配当表に記載しなければならないものとする。この場合においては、最後配当の許可があった日における当該被担保債権のうち極度額を超える部分を配当に加えるべき破産債権の額として記載するものとする。

   (二)  最後配当に関する除斥期間が経過したときは、(一)の破産債権を有する者が最後配当に関する除斥期間内に破産管財人に対し(一)の根抵当権の行使によって弁済を受けることができない債権額を証明した場合を除き、(一)の極度額を超える部分は、当該根抵当権の行使によって弁済を受けることができない債権額とみなすものとする。

 七  少額の配当に関する特則

  1  配当金を受領する意思の届出

   (一)  破産手続に参加しようとする破産債権者は、債権届出期間内に、各破産債権について、その内容等のほか、当該破産債権者に対する配当額の総額が最高裁判所規則で定める金額に満たない場合であっても配当金を受領する意思があるときはその旨を、裁判所に届け出なければならないものとする。

   (二)  届出をした破産債権を取得した者は、届出名義の変更を受ける場合には、その者に対する配当額の総額が(一)の最高裁判所規則で定める金額に満たない場合であっても配当金を受領する意思があるときはその旨を、裁判所に届け出なければならないものとする。

  2  中間配当

 破産管財人は、1(一)及び(二)に規定する事項の届出をしなかった破産債権者が有する債権に対する配当額に相当する金銭を寄託しなければならないものとする。

  3  最後配当

   (一)  破産管財人は、届出をした各破産債権者に対する配当額を定めた場合において、1(一)及び(二)に規定する事項の届出をしなかった破産債権者について、次の(1)及び(2)に掲げる金額の合計額が1(一)の最高裁判所規則で定める金額に満たないときは、当該破産債権者に対して配当をすることができないものとする。

    (1)  破産管財人が定めた当該破産債権者に対する配当額

    (2)  破産管財人が2により当該破産債権者が有する破産債権について寄託した金銭の総額

   (二)  (一)の場合には、(一)(1)及び(2)に掲げる金額の合計額は、他の破産債権者に配当しなければならないものとする。

  4  追加配当

   (一)  破産管財人は、届出をした各破産債権者に対する配当額を定めた場合において、1(一)及び(二)に規定する事項の届出をしなかった破産債権者について、当該配当額が1(一)の最高裁判所規則で定める金額に満たないときは、当該破産債権者に対して配当をすることができないものとする。

   (二)  (一)の場合には、3(二)に準じて取り扱うものとする。

     (注)  最高裁判所規則において、1(一)の金額を千円と定めるものとする。

 八  最後配当における簡易な配当の特則

  1  配当することができる金額が少額である場合の簡易な配当

   (一)  破産管財人は、配当することができる金額が千万円に満たない場合には、(三)に規定する手続(以下「簡易配当手続(仮称)」という。)による配当をすることができるものとする。ただし、中間配当を行ったときは、この限りでないものとする。

   (二)  破産管財人は、簡易配当手続(仮称)による配当をするには、裁判所書記官の許可を得なければならないものとする。

   (三)  簡易配当手続(仮称)

    (1)  破産管財人は、配当表を作成し、これを裁判所に提出した後、届出をした各破産債権者に対する配当見込額を定めて、当該破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該破産債権者に対する配当見込額を通知しなければならないものとする。

    (2)  (1)による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする。

    (3)  (2)により、(1)による通知が届出をした各破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、その旨を裁判所に届け出るものとする。

    (4)  最後配当に関する除斥期間は、(3)による届出があった日から起算して一週間とするものとする。

    (5)  届出をした各破産債権者は、(3)による届出があった日から起算して二週間以内に限り、裁判所に対して、(1)の配当表に対する異議を申し立てることができるものとする。

    (6)  破産管財人は、(3)による届出があった日から起算して二週間を経過した後((5)による異議の申立てがあったときは、当該申立てについての決定があった後)、配当額を定めて、配当を行わなければならないものとする。

  2  破産債権者の全員が異議を述べない場合の簡易な配当

   (一)  破産手続開始時に異議の有無を確認してする簡易配当手続

    (1)  裁判所は、相当と認める場合には、破産手続開始の決定の公告及び通知とともに、破産債権者が簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、一般調査期間の末日又は一般調査期日の終了時までに裁判所に異議を述べるべき旨を公告し、かつ、通知することができるものとする。

    (2)  裁判所書記官は、(1)による公告及び通知をした場合において、届出をした破産債権者が(1)に規定する異議を述べないときは、破産管財人の申立てにより、最後配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。ただし、中間配当を行ったときは、この限りでないものとする。

   (二)  最後配当時に異議の有無を確認してする簡易配当手続

    (1)  裁判所書記官は、(一)により簡易配当手続(仮称)による配当を許可することができない場合でも、破産管財人の申立てにより、最後配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。ただし、中間配当を行ったときは、この限りでないものとする。

    (2)  (1)による許可があった場合には、破産管財人は、届出をした各破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該破産債権者に対する配当見込額のほか、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、1(三)(3)による届出があった日から起算して一週間以内に裁判所に異議を述べるべき旨を通知しなければならないものとする。

    (3)  (1)による許可があった場合において、届出をした破産債権者が(2)の一週間の期間内に簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて裁判所に異議を述べたときは、裁判所書記官は、当該許可を取り消さなければならないものとする。

    (4)  (3)による取消しの処分があったときは、破産管財人は、配当の公告等(一1参照)以下の本則となる配当手続を行わなければならないものとする。

  3  破産債権者の全員が同意した場合の簡易な配当

 最後配当において、破産管財人が定めた配当表、配当額、配当時期及び配当方法について、届出をした破産債権者の全員が同意したときは、裁判所書記官の許可を得て、当該配当表、配当額、配当時期及び配当方法に従って、配当を行うことができるものとする。

第十 四 破産手続の終了

 破産手続終了時に係属している訴訟手続等については、次のように取り扱うものとする。

 一  破産債権の確定関係(第十・四参照)

  1  破産債権の査定の手続

   (一)  破産手続が破産手続終結の決定により終了したときは、引き続き係属するものとする。

   (二)  破産手続が破産手続開始の決定の取消しの決定の確定又は破産手続廃止の決定の確定により終了したときは、当然に終了するものとする。

  2  査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えに係る訴訟手続その他の訴訟手続

   (一)  破産管財人が当事者である場合

    (1)  破産手続が破産手続終結の決定により終了したときは、引き続き係属するものとする。

    (2)  破産手続が破産手続開始の決定の取消しの決定の確定又は破産手続廃止の決定の確定により終了したときは、中断し、破産者においてこれを受け継がなければならないものとする。

   (二)  破産管財人が当事者でない場合

    (1)  破産手続が破産手続終結の決定により終了したときは、中断しないものとする。

    (2)  破産手続が破産手続開始の決定の取消しの決定の確定又は破産手続廃止の決定の確定により終了したときは、当然に終了するものとする。ただし、破産手続開始当時に係属していた訴訟手続であって破産債権の確定のための受継があったものは、終了せずに中断するものとし、破産者においてこれを受け継がなければならないものとする。

 二  理事等の責任の追及関係(第十二・一5参照)

  1  損害賠償請求権の査定の手続

 破産手続が終了したときは、当然に終了するものとする。

  2  査定の裁判に対する異議の訴えに係る訴訟手続その他の訴訟手続

 破産手続が終了したときは、中断し、破産者においてこれを受け継がなければならないものとする。

 三  否認権の行使関係(第三部・第四・四参照)

  1  否認の請求の手続及び否認の請求を認容する裁判に対する異議の訴えに係る訴訟手続

 破産手続が終了したときは、当然に終了するものとする。

  2  1の訴訟手続以外の訴訟手続

 破産手続が終了したときは、中断し、破産者においてこれを受け継がなければならないものとする。

第十 五 小破産

 小破産の制度(第三百五十八条から第三百六十六条まで参照)は、廃止するものとする。

第十 六 強制和議

 強制和議の制度(第二百九十条から第三百四十六条まで参照)は、廃止するものとする。

第十 七 大規模破産事件

 一  管轄及び移送の特例

  1  債権者(破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となる債権を有する債権者をいう。2及び3並びに二において同じ。)の数が五百人以上であるときは、通常の管轄裁判所(第百五条から第百七条まで参照)の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができるものとする。

  2  債権者の数が千人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができるものとする。

  3  裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、破産事件を第一・二1から5までに掲げる裁判所のほか、次に掲げる裁判所にも移送することができるものとする。

   (一)  債権者(破産手続開始の決定があった後にあっては、破産債権者。(二)において同じ。)の数が五百人以上であるときは、通常の管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所

   (二)  債権者の数が千人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所

  4  破産事件を管轄することの根拠が1又は2のみである場合(破産裁判所が破産事件の移送を受けた場合において、移送を受けたことの根拠が3のみであるときを含む。)において、破産債権の査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えについて著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、裁判所は、職権で、当該異議の訴えに係る訴訟を通常の管轄裁判所に移送することができるものとする。

 二  債権者に対する通知の特則

 裁判所は、知れている債権者の数が千人以上であり、かつ、相当と認めるときは、破産法の規定により公告及び通知をしなければならない場合における知れている破産債権者(債権届出期間経過後にあっては、届出をした破産債権者)に対する通知(破産手続開始の通知を除く。)について、原則として、これをしないものとすることができるものとする。

第二部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第一  個人の破産手続に関する特則

 一  自由財産

  1  自由財産の範囲

   (一)  民事執行法第百三十一条第四号及び第五号の動産も、自由財産とするものとする。

   (二)  自由財産のうち、金銭(民事執行法第百三十一条第三号参照)の額については、標準的な世帯の必要生計費(民事執行法施行令第一条参照)を基準として、その三か月分とするものとする。

  2  自由財産の範囲の拡張の裁判

 裁判所は、破産手続開始の決定が確定した日から一か月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の決定時において破産者が有していた自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、自由財産の範囲を拡張することができるものとする。

   (注一 ) 裁判所は、自由財産の範囲の拡張の裁判をするにあたっては、破産管財人の意見を聴かなければならないものとする。

   (注二 ) 自由財産の範囲の拡張の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができるものとする。

   (注三 ) 自由財産の範囲の拡張の裁判等に関する送達等について、所要の規定を整備するものとする。

 二  破産者に対する監守

 破産者に対する監守の制度(第百四十九条から第百五十一条まで参照)は、廃止するものとする。

 三  扶助料の給与

 破産者及びこれに扶養される者に対する扶助料の給与の制度(第百九十二条第一項及び第百九十四条参照)は、廃止するものとする。

第二  免責手続等

 一  免責の申立て

  1  申立ての時期等

   (一)  債務者は、破産手続開始の申立てのあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一か月を経過する日までの間に、裁判所に対し、免責の申立てをすることができるものとする。

   (二)  債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に(一)の免責の申立てがあったものとみなすものとする。ただし、債務者が、破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでないものとする。

   (三)  債務者は、その責めに帰することができない事由により、(一)の期間内に免責の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一か月以内に限り、免責の申立てをすることができるものとする(第三百六十六条ノ二第六項参照)。

  2  債権者名簿の提出

 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、1(二)ただし書の反対の意思を表示したときを除き、免責手続における債権者名簿の提出を要しないものとする。

   (注)  最高裁判所規則において、破産手続開始の申立時の債権者一覧表(第百三十八条参照)の記載事項と免責手続における債権者名簿(第三百六十六条ノ三参照)の記載事項とを同一のものとする旨を定めるものとする。

 二  免責についての審理

  1  調査

   (一)  調査の方法

 免責の調査は相当な方法によってするものとし、期日における審尋(第三百六十六条ノ四第一項参照)によることを要しないものとする。

   (二)  破産管財人による調査及び報告

 裁判所は、破産管財人に免責不許可事由(第三百六十六条ノ九及び四2参照)の有無又は破産手続開始に至った経緯その他裁量免責の判断に必要な事情につき調査をさせ、その結果について書面で報告をさせることができるものとする。

   (三)  裁判所等による免責の調査に対する協力義務

 破産者は、裁判所又は破産管財人が行う免責の調査に協力しなければならないものとする。

  2  意見申述

   (一)  意見申述期間

    (1)  裁判所は、免責の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、免責についての意見申述期間を定めなければならないものとする。

    (2)  裁判所は、(1)の期間を公告しなければならないものとし、当該期間は公告が効力を生じた日から起算して一か月以上としなければならないものとする。

     (注)  (1)の期間を定める決定に関する公告及び通知について、所要の規定を整備するものとする。

   (二)  意見を述べた破産債権者等からの意見聴取

 (一)(1)の期間中に意見を述べた破産債権者及び破産者からの必要的な意見聴取の制度(第三百六十六条ノ八参照)は、廃止するものとする。

    (注)  同様の趣旨に基づく免責取消し前の意見聴取の制度(第三百六十六条ノ十六)及び復権についての異議申立てがあった場合の意見聴取の制度(第三百七十一条)も、廃止するものとする。

 三  免責手続中の個別執行禁止効

  1  免責の申立てがあり、かつ、破産手続廃止の決定の確定(同時破産廃止の場合には、破産手続廃止の決定)又は破産手続終結の決定があったときは、免責の申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権若しくは民事留置権による競売(三において「強制執行等」という。)及び国税滞納処分はすることができず、破産者の財産に対して破産手続開始の決定前に既にされている強制執行等の手続は中止するものとする。

  2  免責許可の決定が確定したときは、1により中止した手続は、その効力を失うものとする。

    (注)  1によって強制執行等又は国税滞納処分が禁止されている破産債権についての時効の停止に関する特則規定を整備するものとする(民事再生法第二十七条第七項及び会社更生法第二十五条第八項参照)。

 四  免責の裁判

  1  裁量免責

   (一)  裁判所は、免責不許可事由(第三百六十六条ノ九及び2参照)がある場合を除き、免責を許可するものとする。

   (二)  裁判所は、免責不許可事由がある場合であっても、破産手続開始に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を相当と認めるときは、免責を許可することができるものとする。

  2  免責不許可事由

   (一)  詐術を用いた信用取引による財産取得行為

 破産者が、破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定の日までの間に、破産の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないことを信じさせるため、詐術を用いて信用取引によって財産を取得したことをもって、免責不許可事由とするものとする(第三百六十六条ノ九第二号参照)。

   (二)  過去に免責許可の決定を受けたこと等

 破産者について次の(1)から(3)までに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれ(1)から(3)までに定める日から七年以内に免責の申立てがされたことをもって、免責不許可事由とするものとする(第三百六十六条ノ九第四号参照)。

    (1)  免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日

    (2)  給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画に係る再生計画認可の決定の確定の日

    (3)  民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

     (注)  民事再生法第二百三十九条第五項第二号イ、ロ及びハの規定についても、同様に制限期間を七年とするものとする。

   (三)  免責の調査に対する協力義務違反

 破産者が裁判所又は破産管財人の行う免責不許可事由の有無等に関する調査に対する協力義務(二1(三)参照)に違反したことをもって、免責不許可事由とするものとする。

  3  免責の決定の確定

 免責の決定が確定した場合の公告の制度(第三百六十六条ノ十四参照)は、廃止するものとする。

   (注)  同様の趣旨に基づく免責の取消しの決定が確定した場合の公告の制度(第三百六十六条ノ十九参照)及び復権の決定が確定した場合の公告の制度(第三百七十二条参照)も、廃止するものとする。

 五  非免責債権

  1  破産手続における非免責債権

 次の(一)及び(二)に掲げる債権を非免責債権(第三百六十六条ノ十二参照)に加えるものとする。

   (一)  破産者による人の生命又は身体を侵害する不法行為で故意又は重大な過失によるものに基づく損害賠償請求権(第三百六十六条ノ十二第二号に該当するものを除く。)

   (二)  破産者が養育者又は扶養義務者として負担すべき費用に関する債権

  2  個人再生手続における非免責債権

 個人再生手続(民事再生法第十三章参照)においては、次の(一)及び(二)に掲げる債権を非免責債権とするものとし、当該債権に係る債務については、再生計画において、期限の猶予の定めをすることはできるものの、減免の定めをすることはできず、他の再生債権について再生計画に基づく弁済が完了したときは残額について履行期が到来するものとする。

   (一)  1(一)及び(二)に掲げる債権

   (二)  債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(第三百六十六条ノ十二第二号)

 ( 第一及び第二関係後注)

  一  個人再生手続開始の要件

 個人再生手続開始の要件となる再生債権の総額の上限(民事再生法第二百二十一条第一項及び第二百三十九条第一項参照)を引き上げ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えない者は、個人再生手続を行うことを求めることができるものとする。

  二  最低弁済額要件

 次に掲げる場合には、裁判所は、再生計画不認可の決定をするものとする(民事再生法第二百三十一条第二項第三号及び第二百四十一条第二項第五号参照)。

   (一)  個人再生手続開始の要件となる再生債権の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき。

   (二)  個人再生手続開始の要件となる再生債権の総額が三千万円を超える場合においては、再生計画に基づく弁済の総額が個人再生手続開始の要件となる再生債権の総額の十分の一を下回っているとき。

第三  相続財産の破産等に関する特則

 一  相続財産管理人等の破産手続開始の申立義務

 相続財産管理人、遺言執行者又は限定承認若しくは財産分離がされた場合における相続人は、破産手続開始の申立てをする義務を負わないものとする(第百三十六条第二項の規定は削除するものとする。)。

 二  破産手続開始の申立て後破産手続開始の決定前の相続の開始

  1  裁判所は、破産手続開始の申立て後破産手続開始の決定前に債務者について相続が開始したときは、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者の申立てにより、当該破産手続開始の申立てに係る手続を相続財産について続行する旨の決定をすることができるものとする。

  2  1に規定する続行の申立ては、1に規定する相続の開始後一か月以内にしなければならないものとする。

  3  2に規定する期間が経過したとき(1に規定する続行の申立てがあった場合には、当該申立てを却下する決定が確定したとき)は、1に規定する手続は、終了するものとする。

  4  1に規定する続行の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

 三  最後配当から除斥された者の権利行使

 相続財産の破産において最後配当から除斥された相続債権者及び受遺者の残余財産についての権利行使を認める第二百八十九条の規定は、削除するものとする。

 四  破産手続廃止の申立て

 相続財産の破産についての破産手続廃止の申立ては、相続人が数人ある場合であっても各相続人ができるものとし、全員の一致を要しないものとする。

第三部 倒産実体法

  (前注 ) 倒産実体法の改正項目に関しては、再生手続及び更生手続における見直しについても記載することとしている。

第一  法律行為に関する倒産手続の効力

 一  賃貸借契約等

  1  賃借人の破産

 賃貸人の解約の申入れ等を定めた民法第六百二十一条の規定は、削除するものとする。

  2  地上権者又は永小作権者の破産

 民法第二百七十六条(同法第二百六十六条第一項において準用する場合を含む。)の規定中、永小作権者(地上権者)が破産手続開始の決定を受けた場合の消滅請求に関する部分(「又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ」)は、削除するものとする。

  3  賃貸人の破産

   (一)  破産管財人の解除権

    (1)  第五十九条の規定は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約については、相手方が当該権利について登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えているときは、適用しないものとする。

    (2)  (1)の場合において相手方が有する請求権は、財団債権とするものとする(第四十七条第七号参照)。

     (注一 ) 再生手続及び更生手続においても、同様の規律を設けるものとする。

     (注二 ) (1)及び(2)の考え方は、特許権についての通常実施権(特許法第九十九条参照)、商標権についての通常使用権(商標法第三十一条第四項参照)等第三者に対抗することができる権利を目的とするライセンス契約におけるライセンサーの破産についても適用されることになる。

   (二)  賃料債権の処分及び賃料の前払の取扱い

 賃料債権の譲渡等の破産手続における効力の制約を定めた第六十三条(民事再生法第五十一条及び会社更生法第六十三条において準用する場合を含む。)の規定は、削除するものとする。

   (三)  賃料債権を受働債権とする相殺の取扱い

    (1)  破産手続

 賃料債権を受働債権とする相殺の制限を定めた第百三条の規定は、削除するものとする。

      (注)  敷金がある場合には、賃借人は、賃料債務を弁済するときは、敷金返還請求権の額の限度において、弁済額の寄託を請求することができる(第百条参照)ことになる。

    (2)  再生手続及び更生手続

 再生手続における賃料債権を受働債権とする相殺の取扱い(民事再生法第九十二条第二項参照)については、次のとおりとし、更生手続(会社更生法第四十八条第二項参照)においても同様の規律を設けるものとする。

     ア  再生債権者が再生債務者に対して負担する債務が賃料債務であるときは、再生債権者は、再生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務については、再生手続開始時の賃料の六か月分に相当する額に限り、相殺することができるものとする。

     イ  再生債権者が、再生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務について、再生手続開始後その弁済期に現に弁済をしたときは、再生債権者が有する敷金返還請求権は、再生手続開始時の賃料の六か月分に相当する額(アにより相殺をする場合には、相殺により免れる賃料債務の額を控除した額)の範囲内におけるその弁済額を限度として、共益債権とするものとする。

 二  請負契約

  1  注文者の破産

 民法第六百四十二条第一項の規定により破産管財人が契約の解除をしたときは、請負人は、同条第二項に規定する損害の賠償につき破産債権者としてその権利を行うことができるものとする。

  2  請負人の破産

 請負人の仕事完成義務に関する破産管財人の権限等を定めた第六十四条の規定は、削除するものとする。

 三  相場がある商品の取引

 第六十一条については、次のとおりとするものとする。

  1  取引所の相場その他の市場の相場がある商品の取引に係る契約であって、その取引の性質上一定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができないものについて、その時期が破産手続開始後に到来すべきときは、当該契約は、解除されたものとみなすものとする。

  2  1の場合において、損害賠償の額は、履行地又はその地の相場の標準となるべき地における同種の取引であって同一の時期に履行すべきものの相場と当該契約における商品の価格との差額によって定めるものとする。

  3  第六十条第一項の規定は、2の損害賠償について準用するものとする。

  4  1又は2に定める事項につき、当該取引所又は市場における別段の定めがあるときは、その定めに従うものとする。

  5  1の取引を継続して行うためにその当事者間で締結された基本契約において、その基本契約に基づいて行われるすべての1の取引に係る契約につき生ずる2の損害賠償債権又は債務を差引計算して決済する旨の定めをしたときは、請求することができる損害賠償の額の算定については、その定めに従うものとする。

   (注)  再生手続及び更生手続においても、同様の規律を設けるものとする。

 四  継続的給付を目的とする双務契約

 継続的給付を目的とする双務契約において、給付を受ける者が破産した場合の取扱いについては、次のとおりとするものとする。

  1  破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る請求権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができないものとする。

  2  1の双務契約の相手方が破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含むものとする。)は、財団債権とするものとする。

  3  1及び2は、労働契約には、適用しないものとする。

第二  各種債権の優先順位

 一  租税債権

  1  破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権

   (一)  破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権であって、破産手続開始の時において、納期限が到来していないもの又は納期限から一年を経過していないものは、財団債権とするものとする。

   (二)  (一)以外のものについては、優先的破産債権とするものとする。

  2  1の租税債権の破産手続開始後に生ずる附帯税

   (一)  1(一)により財団債権となる租税債権につき破産手続開始後に生ずる延滞税、利子税又は延滞金は財団債権とし、1(二)により優先的破産債権となる租税債権につき破産手続開始後に生ずる延滞税、利子税又は延滞金は劣後的破産債権とするものとする。

   (二)  各種の加算税又は加算金については、罰金等(第四十六条第四号参照)と同様、劣後的破産債権とするものとする。

  3  破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずる租税債権

   (一)  破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずる租税債権は、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(第四十七条第三号参照)に該当すると認められるものに限り、財団債権とするものとする。

   (二)  (一)以外のものについては、劣後的破産債権とするものとする。

 二  労働債権

  1  破産手続開始前の未払の給料債権及び退職手当の請求権

   (一)  破産手続開始前三か月間に生じた給料債権は、財団債権とするものとする。

   (二)  破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権は、退職前三か月間の給料の総額に相当する額を財団債権とするものとする。ただし、破産者の使用人が破産手続開始後に退職した場合において、退職前三か月間の給料の総額が破産手続開始前三か月間の給料の総額より少ないときは、破産手続開始前三か月間の給料の総額に相当する額を財団債権とするものとする。

    (注)  (二)の退職手当の請求権が定期金債権である場合については、その算定方法につき所要の整備をするものとする(第四十六条第七号参照)。

  2  労働債権に対する弁済の許可

   (一)  優先的破産債権となる給料債権又は退職手当の請求権について届出をした破産債権者が、その破産債権の弁済を受けなければ、その生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、最初の配当の許可があるまでの間、破産管財人の申立てにより又は職権で、その弁済をすることを許可することができるものとする。ただし、その弁済により財団債権を有する者又は他の先順位若しくは同順位の優先的破産債権を有する者の利益を害するおそれがないときに限るものとする。

   (二)  破産管財人は、(一)の破産債権者から(一)の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならないものとする。この場合において、破産管財人は、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならないものとする。

   (三)  (一)により弁済を受けた破産債権者は、他の同順位の優先的破産債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の配当を受けるまでは、破産手続により配当を受けることができないものとする。

 三  その他の各種債権

  1  無利息債権の期限までの中間利息分

 破産手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のものについては、破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する法定利息の額に相当する部分を劣後的破産債権とするものとする。

  2  約定劣後債権

   (一)  破産手続

    (1)  債権者と債務者との間において、破産手続における配当の順位につき第四十六条各号に掲げる請求権(劣後的破産債権)に後れる旨の合意がされた債権は、同条各号に掲げる債権に後れるものとする。

    (2)  破産債権者は、(1)の合意がされた債権については、議決権を有しないものとする。

   (二)  再生手続

    (1)  (一)(1)の合意がされた債権(以下「約定劣後債権」という。)について、届出がされ、又は認否書に記載がされた場合には、再生計画においては、(一)(1)の合意における権利の順位を考慮して、再生計画の内容に公正かつ衡平な差を設けなければならないものとする。

    (2)  (1)に規定する場合には、再生計画案の決議は、(3)の場合を除き、再生債権(約定劣後債権を除く。)を有する者と約定劣後債権を有する者とに分かれて行うものとする。

    (3)  再生債務者が再生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後債権に優先する債権を完済することができない状態にあるときは、約定劣後債権を有する者は、議決権を有しないものとする。

     (注)  一般の再生債権と約定劣後債権とを組分けすることに伴い、所要の整備をするものとする。

   (三)  更生手続

    (1)  更生計画においては、次に掲げる権利の順位(会社更生法第百六十八条第一項参照)を考慮して、更生計画の内容に公正かつ衡平な差を設けなければならないものとする。

     ア  更生担保権

     イ  一般の先取特権その他一般の優先権がある更生債権

     ウ  イ及びエに掲げるもの以外の更生債権

     エ  約定劣後債権

     オ  残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の株式

     カ  オに掲げるもの以外の株式

    (2)  更生計画案の決議は、原則として、(1)アからカまでに掲げる種類の権利を有する者に分かれて行うものとする。

    (3)  更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後債権に優先する債権を完済することができない状態にあるときは、約定劣後債権を有する者は、議決権を有しないものとする。

  3  財団不足になった場合における財団債権の取扱い

   (一)  破産財団が財団債権の総額を弁済するのに不足することが明らかになったときは、財団債権については、法令に定める優先権にかかわらず、まだ弁済していない債権額の割合に応じて弁済するものとする。ただし、財団債権を被担保債権とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権がある場合には、当該留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権の効力は、妨げないものとする。

   (二)  (一)本文の場合には、破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(第四十七条第一号参照)並びに破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(同条第三号参照)は、他の財団債権に先立って弁済するものとする。

  4  財団債権に基づく強制執行等の禁止等

   (一)  破産手続開始の決定があったときは、破産財団に属する財産に対する財団債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分、企業担保権の実行、一般の先取特権による競売又は国税滞納処分の手続は、することができないものとする。

   (二)  破産財団に属する財産に対して既にされている財団債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分、企業担保権の実行又は一般の先取特権による競売の手続は、破産財団に対してはその効力を失うものとする。ただし、破産管財人において破産財団のために強制執行又は一般の先取特権による競売の手続を続行することを妨げないものとする。

    (注)  破産手続開始前に国税滞納処分がされている場合には、現行法と同様、その国税滞納処分の続行を妨げないものとする。


    (後注 ) 社債管理会社の費用償還請求権及び報酬請求権の財団債権化について、所要の規定を整備するものとする(会社更生法第百三十一条参照)。

第三  多数債務者関係

 一  複数の各自全部の履行をする義務を負う者の全員又はそのうちの数人若しくは一人が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその債権の全額について破産債権者として権利を行った場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者が破産手続開始後に債権者に弁済をしたときは、債権者の債権の全額が消滅した場合に限り、その求償権を有する者は、求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行うことができるものとする(第二十六条第二項参照)。

 二  物上保証人が破産手続開始後に債権者に弁済をしたときも、一と同様の取扱いとするものとする(第二十六条第三項参照)。

  (注)  再生手続及び更生手続においても、同様の規律を設けるものとする。

第四  否認権

 一  否認権の要件

  1  詐害行為(狭義)に関する否認の要件

   (一)  次に掲げる行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができるものとする。

    (1)  破産者が破産債権者を害することを知ってした行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。

    (2)  破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。

   (二)  破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者が受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるもの(対価的均衡を欠く代物弁済等)は、(一)と同様の要件に基づき、消滅した債務の額に相当する部分を超える部分について、これを否認することができるものとする。

    (注)  無償行為の否認については、第七十二条第五号と同様の規定を設けるものとする。

  2  偏頗行為に関する否認の要件

   (一)  破産者が既存の債務についてした担保の供与又は債務の消滅に関する行為は、その行為が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にされたものであり、かつ、債権者が、その行為の当時、次の(1)又は(2)に掲げる区分に応じ、それぞれ(1)又は(2)に定める事実を知っていたときは、破産手続開始後、破産財団のために否認することができるものとする。

    (1)  当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと

    (2)  当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと

   (二)  (一)の適用については、(一)の行為が破産者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものであるときは、債権者の主観的要件に関する証明責任を転換するものとする。

   (三)  (一)の行為が破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しないものであって、当該行為の後三十日以内に支払不能になったときは、これを否認することができるものとする。ただし、債権者が、その行為の当時、他の破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。

   (四)  (一)(1)及び(三)の適用については、支払の停止(破産手続開始の申立て前一年以内のものに限るものとする。)があった後は、支払不能であったものと推定するものとする。

  3  適正価格による不動産等の処分に関する否認の要件

 破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次の(一)から(三)までの要件に該当するものである場合に限り、破産債権者を害する行為として、否認することができるものとする。

   (一)  当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の性質の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。

   (二)  破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

   (三)  相手方が、当該行為の当時、破産者が(二)の意思を有していたことを知っていたこと。

  4  受益者が内部者である場合における証明責任の転換

 2(一)及び3の適用については、受益者が次に掲げる者である場合には、受益者の主観的要件に関する証明責任を転換するものとする。

   (一)  破産者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者

   (二)  破産者との間に次に掲げる関係がある者

    (1)  破産した株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

    (2)  a商法第二百十一条ノ二に規定する親会社及び子会社又はb同条に規定する子会社が破産した株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該親会社

    (3)  株式会社以外の法人が破産した場合における(1)又は(2)に準ずる者

   (三)  破産者の親族又は同居者

 二  第八十四条の見直し

 破産手続開始の申立てがあった日から一年以上前にした行為(無償行為を除く。)は、支払の停止を要件として否認することができないものとする。

 三  詐害行為の否認の効果

 詐害行為(一1(一)及び3の対象となる行為をいう。)の否認の効果については、次のとおりとするものとする。

  1  詐害行為が否認されたときは、相手方は、次の(一)又は(二)に掲げる区分に応じ、それぞれ(一)又は(二)に定める権利を行使することができるものとする。

   (一)  破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利

   (二)  破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存しない場合 財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利

  2  1(二)にかかわらず、詐害行為が否認された場合において、破産者が、当該行為の当時、反対給付として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が、当該行為の当時、破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、相手方は、次の(一)又は(二)に掲げる区分に応じ、それぞれ(一)又は(二)に定める権利を行使することができるものとする。

   (一)  破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利

   (二)  破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存しない場合 破産債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利

  3  破産管財人は、詐害行為の否認によって破産財団に復帰すべき財産の返還に代えて、相手方に対し、当該財産の価額から1又は2によって財団債権となる額(1(一)の場合にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を求めることができるものとする。

   (注)  一から三までについては、再生手続及び更生手続においても、同様の見直しをするものとする。

 四  否認権の行使方法

 破産管財人は、否認の請求の方法によっても否認権を行使することができるものとする。

   (注)  否認の請求を認容する決定に対する異議の訴えにおいて、否認の請求を認可し、又は変更する判決をする場合には、損害賠償請求権の査定の裁判に対する異議の訴えの場合(第一部・第十二・一5(注一))と同様に、裁判所は、破産管財人の申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで、仮執行をすることができることを宣言することができるものとし、再生手続及び更生手続においても、同様の見直しをするものとする。

 五  否認の訴え及び否認の請求事件の管轄

 否認の訴え及び否認の請求事件は、破産裁判所が管轄するものとする。

第五  担保権等の倒産処理手続上の取扱い

 一  譲渡担保権者の破産

 譲渡担保権設定者の目的財産の取戻しの制限を定めた第八十八条(民事再生法第五十二条第二項及び会社更生法第六十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、削除するものとする。

 二  共有者の別除権

 共有に関する債権を有する他の共有者に別除権を認めた第九十四条の規定は、削除するものとする。

第六  相殺権

 一  相殺禁止の範囲の見直し

  1  破産債権者の債務負担(第百四条第一号及び第二号参照)

   (一)  破産債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができないものとする。

    (1)  破産手続開始後に破産者に対して債務を負担したとき。

    (2)  支払不能になった後に、a破産者との間で、契約によって負担する債務を専ら破産債権との相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を締結し、又はb破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けたことによって、破産者に対して債務を負担した場合であって、aの契約の締結又はbの債務引受の当時、支払不能であったことを知っていたとき。

    (3)  支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった当時、支払不能でなかったときは、この限りでないものとする。

    (4)  破産手続開始の申立てがあった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

   (二)  (一)(2)から(4)までに該当する場合であっても、当該債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、破産債権者は、破産手続によらないで、相殺をすることができるものとする。

    (1)  法定の原因

    (2)  破産債権者が支払不能((一)(2)の場合)、支払の停止((一)(3)の場合)又は破産手続開始の申立て((一)(4)の場合)があったことを知った時より前に生じた原因

    (3)  破産手続開始の申立てがあった時から一年以上前に生じた原因

  2  破産者に対して債務を負担する者の破産債権の取得(第百四条第三号及び第四号参照)

   (一)  破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができないものとする。

    (1)  破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。

    (2)  支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その当時、支払不能であったことを知っていたとき。

    (3)  支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった当時、支払不能でなかったときは、この限りでないものとする。

    (4)  破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

   (二)  (一)(2)から(4)までに該当する場合であっても、当該破産債権の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、破産者に対して債務を負担する者は、破産手続によらないで、相殺をすることができるものとする。

    (1)  破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約

    (2)  法定の原因

    (3)  破産者に対して債務を負担する者が支払不能((一)(2)の場合)、支払の停止((一)(3)の場合)又は破産手続開始の申立て((一)(4)の場合)があったことを知った時より前に生じた原因

    (4)  破産手続開始の申立てがあった時から一年以上前に生じた原因

    (注)  一については、再生手続及び更生手続においても、同様の見直しをするものとする。

 二  破産管財人の催告権

  1  破産管財人は、一般調査期間が経過し、又は一般調査期日が終了した後は、第九十八条又は第九十九条の規定により相殺をすることができる破産債権者に対し、一か月以上の期間を定め、その期間内に当該破産債権について相殺をするか否かを確答すべき旨を催告することができるものとする。ただし、破産債権者の負担する債務が弁済期にあるときに限るものとする。

  2  1による催告があった場合において、破産債権者が1により定めた期間内に相殺をしないときは、破産債権者は、当該破産債権についての相殺をもって他の破産債権者に対抗することができないものとする。

 三  破産管財人による相殺

 破産管財人は、破産財団に属する債権をもって破産債権と相殺することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、裁判所の許可を得て、相殺をすることができるものとする。

第四部 その他

第一  倒産犯罪

 一  破産財団を構成する財産の価値を侵害する行為及びその収集を困難にする行為の処罰

  1  詐欺破産行為の処罰

   (一)  破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、以下の行為をした者又は情を知って(4)に規定する行為の相手方となった者は、破産手続開始の決定が確定したときは、処罰するものとする。

    (1)  債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為

    (2)  債務者の財産の譲渡又は債務者における債務の負担を仮装する行為

    (3)  債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

    (4)  債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

   (二)  (一)に規定するもののほか、債務者が破産手続開始の決定又は保全管理命令を受けたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、債務者の財産を取得し、又は取得させた者は処罰するものとする。

  2  破産管財人等の任務違反行為の処罰

 破産管財人等が、自己若しくは第三者の利益を図り又は債権者に損害を加える目的で、その任務に違反して、債権者に財産上の損害を加えたときは、処罰するものとする。

  3  義務に属しない偏頗行為の処罰

 債務者が、破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保を供与し、又は債務を消滅させる行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期において債務者の義務に属しないものをし、破産手続開始の決定が確定したときは、処罰するものとする。

 二  破産者の財産等に関する情報の収集を妨害する行為の処罰

  1  重要財産に関する破産者の説明義務違反行為の処罰

 破産者が、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出する義務に違反して、その提出を拒み、又は虚偽の書面を裁判所に提出したときは、処罰するものとする。

  2  破産管財人等への説明義務違反行為等の処罰

 説明義務等を負う破産者等(第一部・第四・二1及び3参照)が、破産管財人、債権者集会又は債権者委員会の請求により、破産に関して必要な説明等を求められた際に、その説明等を拒み、又は虚偽の説明等をしたときは、処罰するものとする。

  3  破産者の業務及び財産の状況に関する物件の隠滅行為の処罰

   (一)  破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造した者は、破産手続開始の決定が確定したときは、処罰するものとする。

   (二)  裁判所書記官が閉鎖した破産者の財産に関する帳簿を隠滅し、偽造し、又は変造した者は処罰するものとする。

  4  破産手続開始又は免責に関する審尋における陳述拒絶又は虚偽陳述の処罰

 債務者が、破産手続開始(債務者以外の者がその申立てをした場合を除く。)又は免責に関する審尋において、陳述を拒み又は虚偽の陳述をしたときは、処罰するものとする。

 三  破産管財人等の職務執行に対する妨害行為の処罰

 偽計又は威力を用いて、破産管財人等の職務を妨害した者は処罰するものとする。

 四  破産管財人等に係る贈収賄行為の処罰

  (一)  破産管財人等の収賄行為の処罰

   (1)  破産管財人等が、収賄行為をしたときは処罰するものとする。

   (2)  破産管財人等が、不正の請託を受けて、収賄行為をしたときは加重処罰するものとする。

  (二)  破産債権者等の収賄行為の処罰

 破産債権者等が、不正の請託を受けて、収賄行為をしたときは処罰するものとする。

  (三)  破産管財人等への贈賄行為の処罰

 (一)又は(二)の各場合において、贈賄行為をした者は、収賄行為をした者と同等に処罰するものとする。

 五  不正な手段により破産手続外で破産債権の充足を図る行為の処罰

 破産者又はその親族等に破産債権を弁済させ、又は破産者の親族等に破産債権に係る保証をさせる目的で、面会を強請し又は強談若しくは威迫の行為をした者は処罰するものとする。

 六  その他倒産犯罪に係る罰則について、所要の整備をするものとする。

第二  倒産処理手続相互の関係

 一  再生手続から破産手続への移行

 a再生手続開始前に係属している破産事件を再生裁判所に移送する制度、b再生手続廃止の決定等があった後その決定が確定するまでの間、再生裁判所に破産手続開始の申立てをすることができる制度、c再生手続において届出があった債権について破産債権としての届出を要しないものとする制度を設ける等、所要の整備をするものとする。

  (注)  再生手続が再生手続廃止の決定等によって不成功に終わり、裁判所の職権等による破産手続開始の決定があった場合には、再生手続において一般優先債権とされる給料債権のうち破産手続において財団債権として取り扱われる範囲(第二部・第二・二1(一)参照)は、給料債権を有する者の利益に配慮して、再生手続開始の決定の日を基準として定めるものとする。

 二  再生手続から破産手続への移行以外の移行

 破産管財人が再生手続開始の申立てをすることができる制度等を設けるほか、再生手続から破産手続への移行に準じて、所要の整備をするものとする。

第三  その他

 その他所要の規定を整備するとともに、この改正に伴い、民事再生法、会社更生法その他の法令に所要の改正を加えるものとする。

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