2024年9月10日火曜日

破産法違反容疑(偏頗弁済)で破産会社の元社長らを逮捕 ー北海道警

 札幌市にある建築機械レンタル会社、K’Sレンタルの元社長が破産法違反の疑いで逮捕されました。元社長は破産手続きに先立ち、取引先約150社のうち、特定の1社にだけ債権譲渡を行い、事実上の債務の返済を行ったとみられています。また、今回、返済を受けた会社の社長も同じ容疑で逮捕されています。

 


 

約150社のうち1社のみに債権譲渡


逮捕されたK’Sレンタルの元社長は、会社の経営が危機に陥る中、2023年4月、取引先の一つだったシンヨウ(解体業)の会社社長と共謀し、債権譲渡を行ったといいます。
その後、10月にK’Sレンタルの破産手続きが開始されましたが、4月に行ったこの債権譲渡が、実質的におよそ4000万円の債務の返済にあたり、他の債権者の利益を害したとして、北海道警は破産法違反の容疑で、K’Sレンタルの元社長およびシンヨウの社長を逮捕しました。

K’Sレンタルが抱えていた債務は、金融関係の企業など約150社、合わせて15億円にのぼり、本来であれば、これを適切な比率で各社に返済を行うべきところ、シンヨウ1社のみに偏った債務返済を行なった点(いわゆる「偏頗弁済」)が問題視されています。

北海道警察が破産法違反で検挙した事例は初めてだそうで、他にも不正な行為がなかったか調べを進めていくとしています。

 

偏頗弁済とは


法人が破産した場合、支払不能もしくは債務超過にある債務者の財産などを適正に処分し、債権者への配当を行ったうえで、法人を清算します。この破産手続きでは、個々の債権者の処遇は「債権者平等の原則」に則って決定されるべきと考えられています。

「債権者平等の原則」とは、債権者は、債権の発生時期や発生原因に関わらず、債権額に応じた平等な取り扱いと弁済を受けるべきという原則です。

破産手続きなどを行うことで、債務者としては抱えていた債務が免除または減額される一方、債権者の立場では、返済額の減少や返済時期の後ろ倒しなどの大きな不利益を被ります。そうした中で、債権者に債務者の破産に少しでも納得してもらうため、全ての債権者が同条件で譲歩を求められる構図を作る必要があります。
そのため、債務者に残された財産は各債権者に対し、債権額に応じて平等に分配されるべきだと考えられています。

しかし、今回の事件では、債務者が一部の債権者のみに利益があるよう優遇する「偏頗弁済」があった疑いが持たれています。

破産法・民事再生法上、この偏頗弁済を行った債務者にはペナルティが科されます。

(1)刑事罰
他の債権者を害する目的で義務のない偏頗弁済を行うと、「特定の債権者に対する担保の供与等の罪」が成立し、今回のように逮捕される恐れがあります(破産法第266条)。5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

(2)破産管財人に弁済を否認される
偏頗行為があると、実際にはあるべき財産がすでに一部の債権者の返済のためなくなっていることになります。そのため、破産管財人は返済された財産を取り戻し、債権者全員に配当できるようにします。この制度は「否認権」と呼ばれ、破産法第162条で偏頗弁済は破産管財人による偏頗行為否認の対象となっています。万が一債権者が返済された金を使い切っていても、全額を返還しなければならないと定められています。

(3)免責を認めてもらえなくなる
偏頗弁済は、免責不許可事由(破産法第252条1項1号)です。免責不許可事由がある場合には、原則として破産免責が認められなくなります。

 

コメント


帝国データバンクが発表したデータによりますと、2024年1月の倒産件数は700件で、21カ月連続で前年同月を上回っているほか、1月としては4年ぶりに700件台となったということです。また、2023年、1年間の企業倒産件数は8497件で、2019年以来4年ぶりに8000件を超えています。
コロナ支援策もすでに終了していることから、今年はさらに倒産数が増えるともいわれており、11年ぶりに1万件以上の倒産があるのではないかとも一部報道されています。

会社の破産が見えてくる中、せめて、会社の経営を支えてくれた知人に迷惑はかけられないと、特定の会社・人に優先的に返済を行いたくなる気持ちは理解できなくはないですが、明確な破産法違反行為となります。

会社倒産後に心機一転、次のキャリアで再起を図るためにも、十分に留意したいところです。

 

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