政府が4日に決定した緊急事態宣言の期間延長は、新型コロナウイルスの感染拡大で体力を奪われていた日本企業の経営環境を一段と悪化させそうだ。事業の縮小・休業で収益が入らない一方、人件費などの固定費が出続けるためで、延長による経済損失は45兆円ともされる。一部で生産活動を再開する動きなども出てきたが、正常化に向けては予断を許さない状況が続くとみられる。
【表】感染を防ぐ「新しい生活様式」実践例
「春休み、大型連休と、年間で最も単価の高い書き入れ時を2回も逸した。単に数カ月を失ったわけではない」。政府の緊急事態宣言に伴う外出自粛要請が全国で続く中、あるホテル経営関係者は窮状を訴える。
東京商工リサーチによると、新型コロナ関連の破綻は1日夕時点で114件。訪日客も国内旅行者も消えた宿泊業は26件と突出する。4月30日には大型連休期間にもかかわらず、ロイヤルオークリゾート(大津市)、秋芳観光ホテル秋芳館(山口県美祢市)の2事業者の破綻が発覚した。
目下、企業にとって喫緊の課題は資金繰りだ。日本商工会議所が4月、感染拡大が経営へ影響しているという中小企業に資金繰りについて尋ねたところ(複数回答)、「金融機関への相談を行った」が4割弱を占めた。雇用関係では「雇用調整助成金の検討・申し込み」「従業員の休業実施」「採用・派遣労働者の人数を縮小・見送る」も約2~3割を占めた。
企業は雇用を守ろうと懸命だ。ラーメン店「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングスは役員報酬や社員の給与を3カ月間減額すると発表。全従業員の今夏の賞与支給も取りやめる。同社は「休業や営業時間を短縮している店舗もあり、労働組合と協議の上で決定した」と説明する。
製造業の現場では従業員に一定の給与を支払いつつ一時的に休ませる「一時帰休」が広がる。世界的な需要減で工場の一時操業停止や生産調整に追い込まれた自動車メーカーでは、ホンダやマツダ、三菱自動車が生産現場の従業員に対し一時帰休に踏み切った。日本自動車工業会の豊田章男会長は「技術と人材を失ったら回復への基盤すら壊れる」と危機感を語る。
緊急事態宣言の延長は、窮状を深めかねない。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、宣言が5月6日から1カ月間延長された場合の経済損失額を累計45兆円と試算する。6日までの損失額(21・9兆円)から上積みされ、ほぼ倍増となる見通しで、政府は経済活動を部分的に容認する姿勢を打ち出した。
企業も対応を模索する。国内全拠点を6日まで原則休業としていた東芝は7日から事業活動を再開する。工場では6月以降、週休3日制を導入する方向で労働組合と協議する。大丸松坂屋百貨店は7日から全館休業中の8店舗で食料品売り場の平日営業を始める。
熊野氏は「売り上げが減った中小企業などに現金を給付する『持続化給付金』の上積みなども必要だ」として、企業支援の重要性を主張している。
0 件のコメント:
コメントを投稿