2024年7月27日土曜日

法人破産をしたら代表者は自己破産をする必要がある?

 「会社の破産と、個人の破産はどう違うの?」

「経営する会社が破産したら、代表者である自分が借金を払う必要があるのだろうか」


会社経営をされている方で、こんな疑問を感じている方もいるでしょう。


結論としては、法人破産すると会社は消滅しますが、代表者が弁済する義務はありません。

ただし、例外や注意事項もあります。


この記事では、法人破産の基礎的な知識や、注意するべき点などの基本的な情報を解説します。



会社の破産と個人の破産の違いについても解説していきます!

この記事の目次

法人・会社が破産をしたら、借金は誰が支払う?

法人の借金は代表者のものではない

代表者が借金を負うケース

法人破産と自己破産の違い

法人破産と個人の自己破産、残せる財産の違い

免責と残る債務の違い

破産手続き費用の違い

法人と代表者が同時に破産したらどうなる?

免責を得られば返済の義務はなくなる

自由財産は保持できる

法人・会社破産する際の注意点

会社の財産を私物にしない

特定の借金だけを返済しない

まとめ:法人破産をしても代表者は弁済義務がない。しかし例外もあるため、法人破産検討時点で弁護士や司法書士に相談しよう。

法人・会社が破産をしたら、借金は誰が支払う?

先に述べたように、法人破産をしても代表者が弁済する義務はありません。

法人・会社の借金は、その法人・会社が払うのです。


では、どのような流れで手続きするのでしょうか。


法人・会社が破産手続きをするには、裁判所に申し立てが必要です。

裁判所が「破産法の要件を満たす」と判断すると、破産手続き決定が下され、破産管財人が選出されます。


その破産管財人が、法人・会社の資産状況を調べ、資産があれば債権者へ財産を配分し、破産手続きが終了します。

この手続きが完了すると、会社は消滅します。


破産手続き完了時点で、法人・会社の資産よりも借入れが多かった場合、債務は残りますが、支払うべき法人・会社は消滅しているため、結果的に借金が免除されるということになります。


また、法律上「法人・会社」と「代表者個人」は、まったくの別人格とされるため、

会社が消滅したことで結果的に免除になった借金を、代表者個人が返済する必要もありません。


もう少し詳しくみていきましょう。


法人の借金は代表者のものではない

会社にはいくつか種類があります。

例えば、株式会社、有限会社、社団法人、財団法人、NPO法人・・・など。


これらは法人の1種であり、法律上「人」とされ、様々な権利や義務を追うことになります。

法人の財産や債務は、法人のもの。

ですから、代表者であっても法人の借金を負う義務がないのです。


代表者が借金を負うケース

法人である会社と、代表者個人は法律上別人なので、会社の借金を代表者が払う義務はありません。

しかし、いくつか例外的に代表者が会社の借金を負うケースがあります。

例えば、こんなケースです。


代表者が連帯保証人となっている

代表者に損害賠償責任がある

代表者が会社に借金している

①代表者が連帯保証人となっているケース

代表者個人が、法人・会社の借入れの連帯保証人になっている場合は、法人・会社の債務を返済しなくてはなりません。

中小企業の会社が金融機関から借入れをする際、代表者個人が連帯保証人となるケースはよくある話です。


連帯保証人は、債務者が返済しない場合に、債務者に代わって借金返済を約束するので、返済の義務があります。


法人・会社が破産により消滅すると、資産が換金され債権者に支払われます。

資産よりも借入額が大きかった場合の差額を、連帯保証人である代表者個人の資産から支払わなくてはいけません。


例えば、法人・会社の借入額が3,000万円、代表者個人の資産が2,000万円だった場合、差額の1,000万円が代表者個人の債務となってしまうのです。


②代表者に損害賠償責任があるケース

代表者が会社の財産を私的流用していたり、明らかに回収の見込みがない債権を、それと知りながら買い取っているなど、明らかに健全でない経営判断をしている代表者の場合は、損害賠償責任があると判断されるケースがあります。


様々な意思決定をする会社の代表者は、経営を会社から任された者として、善良な経営判断や誠実な経営を行うことが期待されます。

法律上、これを「善管注意義務」と呼びます。


合わせて、代表者には「忠実義務」も定められています。

これは、善管注意義務を会社代表者・代表取締役の法的義務として具体化したものです。


どちらも、会社から経営を任されたものとして、会社のために誠実・忠実に職務を遂行しなくてはならない法的義務で、実務的にはほとんど同一のものとして扱われているといってよいでしょう。


単に経営に失敗し、法人・会社が破産してしまったという場合は損害賠償責任を負うことにはなりません。

しかし、上記のように健全な法的義務を果たしていないと判断された場合、破産管財人から損害賠償を請求されてしまいます。


③代表者が会社に借金をしているケース

代表者個人が、会社に借入金がある場合、会社が破産により消滅しても、借金を返さなくてはなりません。


特に中小規模の会社だと、代表者が個人のお金を会社のお金として使う(=役員借入金)というのはよく聞く話です。

逆に、会社のお金を個人のお金として使う(=役員貸付金)という話もよくあります。


会社の創業者からみれば、会社は自分の分身のようなもの。

特に中小規模の会社だと、会社のお金と代表者個人のお金は一緒という感覚になる方も多いでしょう。


とはいえ、先に述べたように法律上、法人・会社と代表者個人は別人として認識されます。

ですから、代表者が会社に借金をしている場合は、会社に返済する義務があるのです。


法人破産と自己破産の違い

法人・会社の破産と、個人の破産(自己破産)の違いは、大きく3つあげられます。


残せる財産の違い

免責と残る債務の違い

破産手続き費用の違い

具体的にどのような違いがあるのか、みていきましょう。


法人破産と個人の自己破産、残せる財産の違い

法人・会社は、破産すると会社名義の預貯金、土地や建物などの不動産、売掛金などはすべて換金され、手元に一切残りません。

逆に自己破産の場合は、すべての財産を失うわけではありません。


自己破産した人がその後きちんと生活できるよう、生活に最低限必要な財産については処分対象からはずれるのです。


この「生活に最低限必要と認められた財産」を「自由財産」といいます。


例えば、以下のようなものが自由財産としてあげられます。


自由財産にあたるもの

・衣服、寝具、家具、台所用品などの生活に必要な道具

・一ヶ月に必要な食料や燃料

・標準的な世帯の二ヶ月間の必要生計費(政令で認められた金額内)

・農業、水産業を営むにあたり必要な道具

破産手続きをすると、法人・会社であっても、個人であっても、資産を精算し債権者に返済することになります。

法人・会社は破産により消滅し、債務も含めて手元に何も残らないということを抑えておきましょう。


免責と残る債務の違い

法人の破産と、個人の破産の大きな違いは、「免責」という制度の有無といえるでしょう。


免責は、単に「債務の支払いをしなくてよくなる」という意味もありますが、ここでは「(裁判所の免責許可決定によって)債務の支払義務を免除してもらう制度」を指します。


法人・会社でも、個人でも「破産」という手続きは、「借金の支払いが難しくなったときの、最後の法的手続き」であり、「債務の支払いがなくなる」という点は共通しています。


法人・会社は、破産すると会社自体が消滅します。

同時に、支払えなかった債務も消滅するため、法的に免責する必要がありません。


一方で個人は、破産手続きをしても個人が消滅するわけではないため、法的に免責が必要となります。

そして、破産したとしても特定の債務については免責されず、破産後も返済が必要になる債務があります。

これを「非免責債権」といいます。


代表的な非免責債権は、下記のとおりです。


免責が認められないもの

・税金(所得税、相続税、国民健康保険料など)

・慰謝料(破産者が悪意で加えた不法行為に対する損害賠償)

・養育費

・従業員の給料(個人事業主の場合)

・罰金

これらは自己破産をしても免責にはならないため、破産後も返済が必要です。


個人が自己破産した場合は、上記のように非免責債権が残り、法人・会社は破産すると債務ごと会社が消滅するため、残る債務はないという違いを抑えておきましょう。


破産手続き費用の違い

破産を検討しているのであれば、手続きに関わる費用も気になりますね。


一般的に法人・会社破産手続きと、個人の自己破産費用では、より複雑な手続きを要する法人・会社破産手続き費用の方が高額になります。


個人であれば、法人と比べ債権者の人数も、取り扱い金額も低くなります。


その一方、法人・会社は、複数の取引先とのやりとりで売掛金・買掛金(仕入れや、商品を売買したときに後払いにする・されるお金)があったり、管理する資産の種類が多い傾向があります。

また、取り扱う金額も会社規模次第では億を超えるケースもあるでしょう。


このように、規模や金額、関わる人数が多くなるほど、裁判所や弁護士に支払う費用が高くなります。


破産手続きに関わる費用は、主にこの3つです。


裁判所へ納める予納金

弁護士費用

その他実費

予納金とは、破産申し立て人が裁判所へ申立てを行う際に発生する手続き費用のことで、これを納めるまで、裁判所は破産手続き開始決定を出してくれません。


弁護士費用は、主に着手金(結果にかかわらず、弁護士へ依頼した時点で発生する費用)と

報酬金(事件が解決した際に発生する弁護士費用)を指します。


その他実費とは、申立て準備に必要な書類代、登記情報の取得代などを指します。


取り扱い金額、弁護士事務所により金額は異なりますが、相場感としては図のとおりです。


法人・会社


個人


予納金


60万円〜


20万円〜


弁護士費用


50万円〜


30万円〜


合計


110万円〜


50万円〜


前述のとおり、取り扱い金額や規模により金額が異なります。

必要な費用を、すぐに準備できないケースもあるでしょう。


弁護士事務所によっては、無料相談を設けているところもあります。

そういった制度を使って、破産の際いくら費用がかかるかを見積もっておくとよいでしょう。



法人については最低金額の目安となります!詳しくは専門家に直接尋ねてみましょう。

法人と代表者が同時に破産したらどうなる?

先述であげた、法人・会社の借入時に代表者個人が連帯保証人になっているケースだと、会社の借金を代表の資産から支払う必要があります。

しかし、個人の資産でも返済しきれない場合は、自己破産という選択肢も入ってくるでしょう。


では法人・会社と、個人が同時に破産すると、どうなるのでしょうか?


免責を得られば返済の義務はなくなる

連帯保証人は、原則として債務額を一括返済しなくてはなりません。

代表者個人が自己破産する際、裁判所による免責が認められれば返済する義務はなくなりますから、法人・会社の債務が個人の資産よりも大きい場合、会社破産と同時に代表者個人も自己破産を検討してもよいでしょう。


もし法人・会社と、代表者個人の自己破産を別々に進めると、それぞれで破産費用が発生してしまいます。

余分な費用を発生させないためにも、法人・会社破産を検討する際は、代表者自身にどのような影響があるかしっかり確認しましょう。


自由財産は保持できる

仮に代表者個人も自己破産をした場合でも、個人が生活していく上で最低限の財産、いわゆる自由財産は保証されています。

法人・会社破産により会社は消滅しますが、個人の自由財産は手元に残るのでやり直しが効くのです。


法人・会社破産する際の注意点

法人・会社破産をする際、会社の資産を減らしたり、会社の資産を個人に移す・・・という話もありますが、これらは違法行為とみなされる可能性があります。

会社の規模に関わらず、会社の資産と個人の資産は別物として管理しておくことが重要です。


以下で、やってはいけない行為を確認して、違法とならないように注意しましょう。


会社の財産を私物にしない

会社の経費で購入した備品を個人の名義に変えて使う行為は、違法とみなされる可能性があります。

確かに代表者から見れば自身の会社の備品をそのまま使い続けたい、という気持ちもあるでしょう。


ただしそういった行為は、「意図的に財産を隠した」という詐欺行為と判断されてしまう可能性があります。

もし会社の備品を個人の名義で利用し続けたい場合は、事前に弁護士などの法律のプロに相談し、違法行為とみなされないかなどのアドバイスをもらうとよいでしょう。


特定の借金だけを返済しない

法人・会社を経営する中で、金額の大小問わず、借入先が複数になることもあるでしょう。

破産申し立てをする時は、債権者すべてを平等に扱い、平等に返済していきます。


「ここの社長にはお世話になったから、先に返そう。他の借入れ先よりも多く返そう。」といったように、優劣をつけることはできません。


ただし、債権の中でも法的に優先しなくてはならないものもあります。

例えば、元従業員の未払い給料は優先的に支払う必要があり、他の債権と取り扱いが異なるのです。


そういった法的に定められたもの以外を、自分の裁量で優劣をつけることはできないので、注意が必要です。


まとめ:法人破産をしても代表者は弁済義務がない。しかし例外もあるため、法人破産検討時点で弁護士や司法書士に相談しよう。

法律上、法人・会社と、代表者個人は別人とみなされるため、法人破産しても代表者の弁済義務はありません。

しかし、例外として以下のパターンだと代表者が返済する必要があります。


代表者が連帯保証人となっている

代表者に損害賠償責任がある

代表者が会社に借金している

特に中小企業が融資を受ける際、代表者が連帯保証人となっているケースは非常に多いです。

連帯保証人になっていると、債務者である会社が破産すると原則一括払いで弁済しなくてはなりません。


代表者個人の資産から返済できない場合は、会社と同時に代表者の自己破産を検討することになるでしょう。

法人・会社破産では、会社と債務が消滅する代わりに資産も一切残すことができませんが、自己破産であれば生活に最低限必要な財産は手元に残ります。


もし法人・会社破産を検討している場合は、代表者個人の破産も検討した方がよいのか、どういったことをすると違法行為とみなされてしまうのかなど、法律のプロに相談しながら進めるとよいでしょう。

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任意整理, 債務整理に関する記事一覧任意整理費用はいくらかかる?払えないときの対処法も解説

任意整理費用はいくらかかる?払えないときの対処法も解説


債務整理を検討しているけど、費用って頼むところによって違うの?

毎月の返済も苦しいのに、債務整理の費用まで払えるか不安・・・


債務整理の中でも、任意整理という手続きは裁判所を介さず直接交渉できるため、個人再生や自己破産よりも書類や手続きが比較的カンタンとされています。


そんな任意整理ですが、手続きにかかる費用はどれくらいなのでしょうか?

この記事では任意整理の基本情報、費用の目安を解説していきます。



任意整理は弁護士や司法書士に依頼することが一般的となっています!

この記事の目次

任意整理に掛かる費用の相場は?

費用が払えない場合の対処法

分割払いで依頼する

法テラスで相談する

そもそも任意整理とは?

任意整理のメリット

任意整理のデメリット

任意整理をするための条件

任意整理以外の債務整理

個人再生

自己破産

任意整理の手続きの流れ

専門家への依頼

受任通知の送付と取引履歴の開示請求

引き直し計算と過払い請求

和解案を作成し交渉

和解契約を締結後、返済開始

任意整理を依頼する専門家の探し方

近くの事務所を探す

インターネットで探す

自治体が設けている債務相談窓口を活用する

まとめ:任意整理の費用金額は事務所ごとに決まっているため、比較検討がおすすめ

任意整理に掛かる費用の相場は?

任意整理ではどれくらいの費用がかかるのでしょうか?

任意整理でかかる費用で代表的なものは、弁護士や司法書士への依頼料でしょう。


依頼料は特別いくら、と決まっていないため各事務所で自由に設定されています。

着手金、減額報酬、解決報酬金などのその他項目がありますが、

おおよそ5万円〜15万円ほどが相場といってよいでしょう。


任意整理にする社数や、過払い金の有無によっても料金が変わる可能性があるため、詳細については依頼する弁護士・司法書士事務所へあらかじめ確認しておくと安心です。


費用が払えない場合の対処法

相談したくとも「依頼料を払えるほど余裕がない」という方もいるでしょう。

依頼料が一括で用意できない場合は、どのようにすればよいのでしょうか?



依頼料を払いやすくしたり、なるべく安くしたりする方法があります!

分割払いで依頼する

法律事務所によっては、分割払いに対応しているところもあります。

ただし、分割回数が2〜4回と決められているケースも多く、分割回数も一般的には自由に決められないところがほとんどです。


事務所によっては、無料相談会を実施しているところもあります。

心配であれば、そういった相談会を使って支払い方法や回数を確認しておきましょう。


法テラスで相談する

法テラスとは、国によって設立された法トラブルを解決するための総合案内所です。

そこでは経済的余裕がない方が法的トラブルを無料で相談できたり、弁護士・司法書士費用の立替えを行う民事法律扶助業務を依頼することができます。


ただし、民事法律扶助制度に該当するかどうかを確認する必要があります。

以下の項目です。


法テラスの利用条件

1)一定以下の経済力であること

a月収が一定額以下である

b保有財産が一定額以下である

2)勝訴の見込みがないとはいえないこと

3)感情的な報復、宣伝、権利濫用的な利用ではないこと

詳細は法テラス公式HP:民事法律扶助業務のページでご確認いただけます。


そもそも任意整理とは?

ここで改めて、任意整理がどんな手続きなのか抑えておきましょう。

先に述べたとおり、任意整理とは裁判所を介さず債権者と債務者が直接交渉により利息や遅延金をカットすることで、借金総額を減らすことができる手続きです。

手続き後は、原則3〜5年で完済を目指します。


任意整理のメリット、デメリット、手続きをするための条件はどんなものがあるのでしょうか。


任意整理のメリット

任意整理のメリットは大きく3つあります。


裁判所を通さないため、他の手続きより比較的簡易、迅速、柔軟な対応ができる

財産を処分せずにすむ

任意整理の対象となる債権者を選べる

個人再生や自己破産手続きと異なり、裁判所を通さないため手続きに必要な書類や時間が少なくてすみます。

また、A社は任意整理対象にするがB社は対象としないなど、個別に対象者を選ぶことができる点もメリットです。

こういった柔軟な対応が可能なため、残しておきたい財産を処分せずにすみます。


さらに他の手続きと違って、任意整理は手続きをしても官報に掲載されません。

そのため第三者に任意整理手続きをしたとバレるリスクも低いといえるでしょう。


任意整理のデメリット

それでは、任意整理にはどんなデメリットがあるのでしょうか?

大きく分けて、以下のとおりです。


原則として元本のカットは対象外のため、大幅な減額が見込めない

手続きをしてから一定期間、新たなローンやクレジットカードが作れない

法的効力がないため、債権者が交渉に応じない可能性もある

任意整理は債権者と直接交渉ですすめるため、法的効力はありません。

また、一般的に交渉の対象となるのは利息や遅延損害金であるため、

借入元本自体は減額対象とならないケースがほとんどです。


例外として、法律で制限された上限を超えて払いすぎた利息を取り戻す過払い金請求手続きがありますが、それ以外で元本の大幅な減額は見込めないでしょう。


また、債権者との交渉で任意整理手続きが成立すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。

これはいわゆるブラックリスト状態のため、この情報が削除される一定期間は新たな借入ができなくなる点も注意が必要です。



任意整理は借金の返済負担を減らすことができますが、一定期間ローンやクレジットカードが利用できません。

任意整理をするための条件

任意整理を行うための条件は、大きく3つあります。


安定した収入があること

原則3〜5年で完済できる見込みがあること

今後も返済し続ける意思があること

任意整理は36回ほどで完済できるかどうかが、一つの判断基準となります。

そのため、収入に対して返済総額が大きすぎたり、毎月の収入が不安定な場合、相手方に受け入れてもらえない可能性が高くなります。


また、任意整理はあくまで交渉であるため、必ずしも自分の希望が通るわけではありません。

分割払いに応じてもらえなかったり、借入金額の返済実績がないなどで、そもそも交渉に応じてもらえないケースもあります。


任意整理を検討する際は、上記の条件に該当するかしっかり確認しておきましょう。



現実的に返済できそうにない場合、専門家に相談しても任意整理を断られたり、別の債務整理を提案されたりすることがあります。

借金問題のお問い合わせはコチラ

任意整理以外の債務整理

任意整理を希望していても、借入金額が大きかったり収入が不安定な場合はどうすればよいのでしょうか?

債務整理には他にも、個人再生と自己破産手続きがあります。

どんな特徴があるのかみていきましょう。


個人再生

個人再生とは、裁判所に再生計画の認可を受け、借金総額を大幅に減らす手続きです。

一般的に、任意整理では借金問題を解決できない人が使う手続きです。


個人再生の特長としては、大きく3つあげられます。


個人再生の特徴

・借金総額を概ね100万円、または5分の1〜10分の1まで減らせる

・再生計画に則り3〜5年で返済する

・住宅ローン特則で、住宅ローンの支払いを条件にマイホームを残せる

デメリットとしては、


個人再生のデメリット

・官報に事故情報が載る

・自己破産よりも要件が厳しい

・手続きが複雑で、長期化しやすい

ということがあげられるでしょう。


裁判所によっては申立人の返済能力があるかを確認するため、6ヶ月ほど弁済額を支払い続ける「履行可能テスト」を行うケースもあります。


要件は自己破産よりも厳しいですが、借入金元本を大幅に減らしながらもマイホームなどの大きな財産を手元に残せるのは大きなメリットといえるでしょう。


自己破産

自己破産とは、裁判所に免責許可をもらい、借金の返済を免除(免責)してもらう手続きです。

債務整理ときいて、一番に自己破産という言葉を思い浮かべる方も少なくないでしょう。


特徴としては以下の3つがあげられます。


自己破産の特徴

・税金や養育費などを除き、ほぼ全ての借金がなくなる

・職についていない状態、生活保護を受けている状態でも対象となる

・自由財産と呼ばれる生活に最低限必要な財産は手元に残る

自己破産では手元に一切お金が残らない、と思われがちですが、

自由財産といって数ヶ月生活するのに必要な現金や生活用品は手元に残ります。

ドラマであるような、借金も財産も0になって路頭に迷う、なんてことはありません。


自己破産のデメリットは主に以下の3つです。


自己破産のデメリット

・官報に事故情報が載る

・原則として財産のほとんどが処分される

・一部の職業や資格制限がある

個人再生と同じく、官報に事故情報が載るため第三者に知られてしまうリスクは多少なりとも出てきます。

また弁護士、司法書士、税理士などの士業や、会社の取締役などの会社役員、生命保険募集人、警備員などの一部の職業が制限されてしまいます。

したがってこういった職業を続けたい場合は、自己破産を選択することが難しくなってしまいます。



自己破産によって資格をはく奪される訳ではないので、自己破産の手続きが終われば、復帰することができます。

任意整理の手続きの流れ

任意整理をする際、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。

仮に、弁護士へ依頼したケースをみてみましょう。


専門家への依頼

まずは自身の借入状況、収入などを伝え、任意整理可能かどうか弁護士へ相談しましょう。

ヒアリング内容から、任意整理が適切かなどアドバイスをもらいます。

相談の際は、借入先の数や返済状況などをまとめたり、源泉徴収などの自身の収入状況がわかる書面などを用意しておくとスムーズに話をすることが出来ます。

弁護士事務所によっては、無料相談を設けているところもあるので上手に活用するとよいでしょう。


受任通知の送付と取引履歴の開示請求

弁護士へ依頼し正式に委任契約を結ぶと、弁護士から借入先に受任通知が送付されます。

受任通知とは、それを送った弁護士が代理人であるということを債権者たちへ知らせるもので、

この通知を受けた債権者は、債務者本人への取り立てを停止しなくてはなりません。

よって、依頼者は和解成立まで返済を停止することができます。


また、受任通知送付と同時に債務者の取引履歴の開示請求を行います。


取引履歴は、過去の返済で法的な上限金利を超えた利息を払いすぎていないか、現在の借入残高や返済状況などを確認する際に使用されます。


受任通知は弁護士と委任契約が締結されてからおよそ数日で発送、

その後やりとりする取引履歴は、業者により異なりますが数週間から長くて3ヶ月程度で開示されます。


引き直し計算と過払い請求

取引履歴が開示されると、それに基づき弁護士が引き直し計算と呼ばれる利息の再計算を行います。

上限金利を超えて払いすぎた利息があれば、ここで過払い金が発生しているかどうかがわかるのです。

過払い金があれば、過払い金請求を行うことで払いすぎた利息を取り戻すことができます。


引き直し計算〜過払い金請求までの期間は、一般的に1〜2週間が目安となります。


和解案を作成し交渉

先のステップまでで計算した金額をもとに、弁護士が和解案を作成します。

和解案とは、弁護士が債務者の返済能力や借入残高を総合的に判断し、返済期間や借入金の利息や遅延損害金のカットなど、債務者が無理なく計画的に返済できる返済計画をまとめたものです。


この和解案をもとに、債権者と弁護士で交渉を行います。

一般的に、和解交渉は3ヶ月ほどかかるといわれています。


和解契約を締結後、返済開始

弁護士との交渉の結果、合意に至った場合は和解成立となり、合意された返済計画に基づき返済開始されます。

返済期間は一般的に3〜5年程度になることが多いです。


債務者は、返済計画に則り計画通り返済しなくてはなりません。

もし返済が滞ると、期限の利益が喪失され分割払いができなくなり一括で返済しなくてはいけなくなります。

返済が遅れないように、毎月の返済期日をしっかり守って支払いしていきましょう。



任意整理の手続きは弁護士に依頼すれば、ほとんどの作業を代行してくれます。和解案に従って返済をしっかり行うことが重要です。

弁護士費用や手続きの流れについてはこちらの記事も参考にしてください。


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任意整理を依頼する専門家の探し方

任意整理は専門家を通さずに自身でも手続きすることが可能です。

自身で手続きすれば、その分弁護士や司法書士への依頼料をおさえることもできます。


しかし、和解交渉に慣れていなかったり書類作成や手続きの煩雑さを踏まえると、

やはり専門家に依頼する方がよいでしょう。

個人で行う場合、和解交渉が成立しないケースや、そもそも借入先が交渉に応じないケースも考えられます。


とはいえ、どうすれば専門家に会えるのでしょうか?

ここでは専門家を探す方法を解説します。


近くの事務所を探す

一番わかりやすいのは、自身の生活圏内で事務所を運営している弁護士や司法書士へ相談することでしょう。

最寄りの弁護士・司法書士事務所が無料相談を行っていれば、そこで手続きを進めたほうがよいかアドバイスをもらうことができます。


懸念点としては、近くに事務所が見つからなかったり、その事務所が債務整理の経験がどれほどあるかわかりにくい点です。


弁護士、司法書士によって得意分野が異なるケースが多く、

特に取り扱う分野が幅広い弁護士はその傾向が顕著です。


債務整理の経験が乏しいと、対応が遅れたり自身の希望通りに交渉が進まないなど

思わぬトラブルがあるかもしれません。

そうならないように、相談する事務所の得意分野や実績をしっかり確認することがおすすめです。


インターネットで探す

最近では当たり前になっていますが、インターネットで探す方法も有効です。

事務所の公式サイトがあれば、どういう分野で実績を残しているのか、どういう部分にこだわりをもっているのかなど、事前に情報を得ることができます。


無料相談を行っていたり、24時間365日受付をしていたり、メール相談可など柔軟な対応を強みとしている事務所もあります。

また、着手金、報酬金などの相談費用を公開しているサイトもあるので

おおよその依頼費用がいくらになりそうか予想できる状態で選べるのもインターネットのメリットですね。


さらに、最近ですとSNSなどで発信している弁護士の方もいらっしゃいます。

人柄が気になる場合はそういったツールものぞいてみるといいかもしれませんね。


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自治体が設けている債務相談窓口を活用する

いきなり弁護士事務所へいくのはハードルが高い・・・

こう感じていらっしゃる方は、お住まいのエリアにある債務相談窓口の活用もおすすめです。

自治体によっては、消費生活相談・債務相談窓口を設けているところがあります。


例えば東京では、都内消費生活センターを設けており、借金返済に悩む相談者を法律専門家や専門相談機関などにつなぎ、問題解決の道筋ができるまでフォローアップする「東京モデル」を実施しています。


参考:東京くらしWEB


実際の費用については、サイトでは明記されていないため

窓口で相談する際は費用がどれほどかかるのか確認を忘れないようにしましょう。


まとめ:任意整理の費用金額は事務所ごとに決まっているため、比較検討がおすすめ

任意整理は個人でも対応できる手続きで、利息や遅延損害金を交渉によりカットすることで借金総額の減額を目指します。


任意整理の流れは、おおまかに次のようなステップとなります。


任意整理の手続きの流れ

①専門家への依頼

②受任通知の送付と取引履歴の開示請求(数週間〜3ヶ月)

③引き直し計算と過払い請求(1〜2週間)

④和解案を作成し交渉(3ヶ月)

⑤和解契約を締結後、返済開始(3年〜5年)

個人再生や自己再生と比較すれば簡易な手続きといわれていますが、

それでも個人で行うには時間と労力がかかる上、最近だと個人では交渉にすら応じてもらえないケースもあります。


そういったリスクを避けるためにも、弁護士などの専門家に依頼しましょう。


任意整理の費用は特に決まりがなく、依頼する事務所ごとに変わります。

相場感としては5〜15万円が目安となります。

しかし、任意整理対象社数が増えたり、過払い金対応などを依頼するなどで金額がかわるケースもあるので、いくつかピックアップして比較検討することがおすすめです。


借金問題を確実に解決できるよう、自分にあった事務所をみつけましょう。


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地震被害の公衆浴場 破産手続き開始 地震影響倒産県内2例目

 ことし1月の能登半島地震で所有する建物に被害を受けたなどとして、高岡市にある公衆浴場の運営会社が7月、破産手続きの開始決定を受けました。


民間の信用調査会社によりますと地震の影響による倒産は県内で2例目になるということです。

破産管財人の弁護士によりますと、高岡市で公衆浴場を運営していた「松乃湯」は、7月12日に富山地方裁判所高岡支部から破産手続きの開始決定を受けたということです。

1952年に高岡市の中心部に開業した「松乃湯」は老舗の公衆浴場として地域の人たちに親しまれてきましたが、近年は利用者の減少による厳しい経営が続き、代表が亡くなったことなどから去年、公衆浴場の営業を停止していました。

その後も所有する別の建物で不動産収入を得ていましたが、ことし1月の能登半島地震で公衆浴場が入っていた会社所有のビルが被害を受け、修繕費用が必要となることなどから事業の継続を断念したということです。

負債総額は、約5200万円とみられるということです。

民間の信用調査会社東京商工リサーチ富山支店によりますと、地震の影響による倒産は県内で2例目だということで、「地震の被害に加え物価高や人手不足などが追い打ちとなり、今後も企業の事業継続が困難になるケースが出る可能性がある」とコメントしています。

今野智博 元衆院議員 弁護士 ロマンス詐欺 自民党 弁護士法違反 非弁提携

 弁護士資格がない人物らに名義を貸し、弁護士業務を行わせたなどとして、警視庁捜査2課は弁護士法違反の疑いで、元衆院議員で弁護士の今野智博容疑者(48)=埼玉県深谷市=を逮捕した。また、今野容疑者の名義を利用したとして、千葉県市川市の職業不詳、辻直哉容疑者(51)ら男女10人を逮捕した。捜査2課は認否を明らかにしていない。


捜査2課によると、辻容疑者ら10人は今野容疑者の名義を借り、「今野法律事務所」と題したホームページ(HP)を運営。特殊詐欺やSNS型投資詐欺、ロマンス詐欺の被害者を対象に、被害金回復に向けて犯人グループの口座凍結依頼を受け付けるなどの法律業務を行っていたという。


「詐欺被害の返金なら弁護士にお任せください」などと書かれたHPで、問い合わせ先にかけると、東京都内にあった辻容疑者らのアジトにつながるようになっていた。


今野容疑者らは令和5年9月~6年3月の約半年間で、23都府県の20~70代の男女約900人から計約5億円を受け取っていた。相談者の大部分は詐欺被害者だったが、実際に返還された実績はほぼなかったとみられる。売り上げのうち1割を今野容疑者が受け取り、残りを10人らが分配していた。


今野容疑者の逮捕容疑は5年12月~6年1月ごろ、辻容疑者ら10人が詐欺被害者5人から法律業務を請け負い、着手金として計約280万円を受け取る際、弁護士としての自身の名義を貸したとしている。


今野法律事務所のHPによると、今野容疑者は平成24年12月の衆院選に自民党公認で埼玉11区から出馬して初当選し、29年まで衆院議員を務めた。令和2年2月に今野法律事務所の代表に就任した。

2024年7月13日土曜日

ドル円 円安対策 日本銀行 為替介入

 (ブルームバーグ): 円相場が対ドルで急騰した11日の外国為替市場で日本の通貨当局が円買い介入を実施した可能性が高い。日本銀行が12日公表した16日の当座預金増減要因の予想値と市場の推計値との差が大きかったためだ。


為替取引の実際の決済は2営業日後に行われるため、介入が行われた場合、結果は16日の日銀当座預金残高の見通しに表れる。それによると、為替介入などが反映される財政等要因はマイナス3兆1700億円。東京短資とセントラル短資の16日の予想はプラス4000億円、上田八木短資はプラス2000億円だったことから、差額の約3兆5000億円が円買い介入の規模と推定される。


円相場は11日夜、市場予想を下回る米消費者物価指数(CPI)の発表後に1ドル=161円台後半から157円台前半まで急伸。ドル安のタイミングに合わせて政府・日銀が円買い介入に踏み切ったとの見方が出ている。日銀の日銀当座預金の予想値と市場の推計値に大きな隔たりがあれば介入実施の証左となり得るため、日銀の同データに注目が集まっていた。


東短リサーチの高井雄一郎研究員は、財政等要因の金額が「大幅に下振れているため、3兆円強の介入が実施されていた可能性が高い」と指摘。今回は「米CPI発表を受けて円高・ドル安に振れたところに追い打ちするような感じで円買い介入を実施した可能性が高く、前回5月の介入より少ない金額で4円程度、円高に持っていくことができたのではないか」と語った。


11日の円スポット取引は2022年以降で4番目の多さを記録したと、通貨取引市場としては世界最大のCMEグループが明らかにした。


CMEの代表が電子メールの質問に回答したところによると、同社のプラットフォーム(EBSスポット取引)でドル・円は530億ドル(約8兆4300億円)余り取引された。これは22年に介入が実施された10月21日、9月22日、介入が行われたとみられている24年4月29日に次ぐ規模で、大型の取引が行われたことを示唆している。

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