条例違反者の氏名や事業者名を公表する制度が近年、京都府内の自治体に広がっている。罰則には至らない違反を公表することで、抑止効果を高めるのが狙いだ。自治体の中にはホームページで公表しているケースがあり、ネット上に氏名が長期間さらされる恐れもある。専門家は「情報による『終身刑』になりかねない」と慎重な対応を求めている。
【一覧表】こんなことをすれば公表されます
京都新聞社の取材では、公表制度は少なくとも府と4市の計8条例で確認できた。勧告や命令などを出しても従わない場合、公表すると定める。地方自治法は2年以下の懲役や禁錮、5万円以下の過料などの罰則を条例に設けることができると規定している。公表は含まれておらず、各自治体は「公表は罰則ではない」として制度化していた。
公表される違反行為は幅広い。京都市は、繁華街で客引き行為を行った人や店▽いわゆる「ごみ屋敷」の居住者▽管理不全の空き家所有者▽ごみを分別しない事業者-などを対象としている。3月末までに客引き57件、空き家14件の違反者をホームページに掲載した。
京都府は、地球温暖化防止のため駐停車時にアイドリングストップ(エンジン停止)しない車の運転手を公表する。公表例はない。新型コロナウイルス対策特措法に基づく休業・時短営業の要請に従わない事業者を対象とする制度もあり、府はパチンコ店1軒を公表した。
亀岡市はプラスチック製レジ袋の提供を全面禁止する全国初の条例を2021年に施行し、違反店や経営者を公表できる規定を設けた。市は「ペナルティーがないと、順守する店舗から不満が出る」と話す。長岡京市は管理不全の空き家所有者、宇治市は違反広告物の管理者の公表制度を設けた。いずれも公表例はない。
一方、公表は人権侵害につながる恐れがある。京都市はごみ屋敷居住者を公表する際、氏名を記した「標識」を自宅に設置すると定めており、条例制定時に「地域からの排除につながる」との批判が出た。公表期間も「1年間」(京都市の客引き)、「違反が改善するまで」(亀岡市のレジ袋提供者)といった基準を設けている自治体は少なく、府のアイドリングストップ違反者は「ホームページ上の公報に掲載し、情報を消す期間は定めていない」(脱炭素社会推進課)という。
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