民事再生について
民事再生法は、経済的窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的とし、中小企業や個人事業者等をその適用対象としながら、大企業や消費者にもその利用を可能とする再建型倒産処理手続きの一般法として位置づけられています。
裁判所の後見的な監督の下で、原則として債務者が業務遂行権・財産管理処分権を維持しながら、債権者の法定多数決により認められた再生計画に基づき自主再建を図る手続きです。
① 債務者自身の経営権の存続が認められること、
② 手続き開始原因が緩和され、破産手続き開始原因が生ずる前であっても、早期再建に踏み出すことを可能なこと、
③ 再生計画案は申立時に提出する必要はないので、適切な再生計画案の検討に必要な時間が与えられていること、
④ 担保権の実行も一定の場合には中止できること、
⑤ ④担保目的物価格に相当する金銭を一括で支払うことで担保権を消滅させる制度が設けられていること などにより再建に有利な制度となっています。
再生手続きの特徴
第一にDIP型の手続きであることです。
すなわち、管財人を選任しないで債務者自身の経営権の存続を認めることで経営者が倒産手続の申立を躊躇しなくなり早期の申立がなされることなどが期待されています。
第2に、手続きの迅速性です。
倒産手続きの命はその迅速性にありますが、東京地裁の運用では、申立から手続き開始まで1週間程度、再生計画認可まで6カ月程度で処理がされており、迅速な計画的処理が再建の可能性を増大させています。
第3に、債権者の自己責任が強調されています。 再建の当否・方法は、それによって、自己の利害に直接の影響を受ける債権者の自己責任で判断し、裁判所は、必要な手続き情報をできるだけ開示しつつも、裁判所は一歩後退した形で手続きに関与することになります。
手続きの流れ
まず、手続き開始原因を疎明して管轄裁判所に申立をします。再生手続開原因は(ア)支払い不能または債務超過の発生のおそれのあるとき、又は、(イ)事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき、とされています。申立手数料1万円の他に、裁判所の定める予納金を納めます。通常、申立と同時に、債務者の財産の保全や手形不渡りの回避のために、申立により保全処分がなされ、裁判所の監督命令で監督委員が選任されます。
裁判所は申立から1週間程度で、手続き開始原因と申し立て棄却事由がないかを審査し、手続開始決定を行います。開始決定と同時に、債権届出期間、債権調査期間を定め、これを開始決定主文と共に公告し、さらに知れたる再生債権者に通知することとされています。これによって、再生債権の弁済は禁止され(少額債権と再生債務者を主要な取引先とする中小企業者の債権は裁判所の許可を条件として例外が認められます)、債権者の個別の権利行使は、強制執行、仮差押え、仮処分の執行も含めて禁止されるなどの法律効果が生じます。再生債務者には、債権者に対し、公平かつ誠実に、財産管理権を行使して再生手続きを追行する義務を負います。
開始決定によって、再生債務者は業務遂行権及び財産に対する管理処分権を失いませんが財産の処分、借入などの一定に行為については裁判所の許可を受けることが必要で、許可をうけなければならないのに、許可を受けないでした行為は原則無効とされます。
裁判所からの開始決定の通知を受けて、再生債権者は再生債務者に対する債権の届出を行います。債権の届出・調査・確定は、再生債権者からの債権の届出を受けて、その内容を調査して確定させます。届出のない再生債権も再生債務者等が、その存在を知っているときは自認債権として、議決権はありませんが、計画弁済の対象となります。
再生債務者の個別財産について担保権(別除権)を有するものは、再生手続外で、その権利を行使することができますし、共益債権、一般優先債権(労働債権、租税債権)も再生手続き外で随時弁済を受けることになります。
再生債務者等は再生手続き開始後遅滞なく一切の財産について財産評定をするとともに、再生手続き開始に至った事情、再生債務者の業務・財産に関する経過・現状その他の内容を記載した報告書を裁判所に提出します。
再生計画案が再生債務者等によって作成され、再生債権について、その何パーセントをどの位の期間で支払うかなどの計画が立てられます。支払う期間は10年を超え内範囲内で決められます。また、計画による弁済は、最終的な清算である破産手続きよりは多くならなければならないことが定められています(清算価値保障原則)
再生計画案を債権者に提示し、債権者集会での議決を経て、裁判所の認可決定を得ます。決議の可決要件は、出席債権者の過半数(頭数要件)及び総議決債権額の2分の1以上(議決金額要件)の賛成が必要となります。
認可を受けて、再生計画に沿った履行が行われますが、再生計画の履行は、再生計画認可決定確定から3年間(履行が終了すればそれまで)、監督委員の監督を受けることになりますが、それが終了すれば手続きも終結します。
東京地裁の標準スケジュールを掲載
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